心の傷を作りながらも、俺は必死であの日のことをなかったことにしようとしていた。
そして時間が立ち、隼人と離れることになって、過去の恋愛に消化できると思っていたのにこれだ。

「なんで再開なんかしちゃうかねー……」

バイトが終わり、俺がエプロンを外しロッカーに向かおうとした時。

「広瀬くーん、三上くんもお疲れ!」

シフトが一緒だったひとつ上の先輩、美咲さんが声をかけてきた。

「この後さ……みんなでご飯行かない?」

はじめて誘ってもらったご飯。
これは参加すべきだ。でも……隼人がいるんだよな。
今日はやめておくか……。

もう少し距離が出来たら普通にできると思うから、その時にしよう。

「すみません、俺……今日予定があって……」

俺は、残念そうな顔を浮かべて美咲さんに頭を下げた。

「えーそっか……残念。じゃあまた今度ね!ご飯くらいなら私たちしょっちゅう行ってるから」
「はい、ぜひまた誘ってください」

俺はそう言って笑顔を作った。

「じゃあ三上くんは?行くよね?」
「今日、三上くんいるなら行きたーい!強制参加ね?」

女子たちが隼人の周りに群がる。
コイツ……ここでもモテてるのか。
俺が知っている高校時代と、何も変わらない。

隼人は、ああやって無表情で立っているだけで勝手に人が集まってくる。
あいつは、その輪の中心にいるのが当たり前なんだ。