あの日のことをなかったことにしたくなくて、忘れていてほしくなくて強制的に思い出させるようなことを言った。
しらしめたかったんだと思う。
俺たちの過去は、忘れられるようなそんな軽いものじゃないはずだと。
陽の手が俺を振り払う。
「な、なんだよ……急に」
やってしまった。
焦りすぎた。落ち着け……。
もう同じ過ちは繰り返さない。
もう陽に嫌われたくない。
でも、まだチャンスがあるというのなら……俺は、頑張りたい。
「ごめん……会えて良かったよ、それじゃあ」
俺は逃げるようにその場を去った。
「はぁ……っ」
心臓が痛いくらいに脈打っている。
路地裏を早足で歩きながら、俺は空を仰いだ。
(……また会えた)
ずっと探していた陽が、すぐ手の届く場所にいた。

