バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


会話が弾むにつれ、陽の警戒心が少しずつ解けていくのが分かる。
普通にしゃべってる。

このまま、普通に話せる関係になれたら、昔のように戻れるかもしれない。

また友達として陽と……。
友達と、して?

そう思った矢先、俺は切なくなった。

普通に話せる関係というのは、友達になるということ。
陽の中の友達の1人になるということだ。

あの時の思い出は、全部なかったことにして、ただの友達に?

「まぁ大学一緒だってことも発覚したし、また会う機会もあると思うけど、友達としてまたよろしくな?」

そんなの嫌だ。

「……じゃ、俺こっちだから」

俺は陽と友達に戻りたいんじゃない。
俺は、立ち去ろうとする陽の腕を、衝動的に掴んでいた。

「え……?」

振り返る陽の瞳が揺れている。

ダメだ。放せ。
そんなことしたらまた嫌われるに決まってる。

そもそも陽は俺を恨んでいるかもしれない。
俺とは関わりたくないかもしれない。

しかし、気持ちは止められなかった。

「友達として、じゃなかっただろ」