俺は落ちつくために深く息を吸った。
少しだけ茶色く染められた髪。
高校の時より少し大人びた雰囲気。
でも、その驚いたように見開かれた大きな瞳は、あの時から全然変わっていない。
ウソだ。
そんなことあるわけないって思ってた。
もうきっと高校を卒業したら会うこともなくなるんだろうって。
なのに、会えた。
全身の血が沸騰するみたいに熱くなる。
こんな感情になるのはいつも陽だけ。
名前を呼びたい。
陽と話したい。
そんな衝動を俺はギリギリの理性でねじ伏せた。
「……教育係を担当する三上隼人です」
ちゃんと抑えられただろうか。
嬉しそうな顔はしてなかったか?
声が震えなかったか?
考えるのはそんなことばかり。
どうしよう……嬉しい。
バイトが終わりの帰り道。
俺は陽の後を追いかけた。
そして会話をする。
久しぶりで妙に緊張した。
「……隼人は大学、どこ通ってんだ?」
「……秀堂大学だけど」
「はあ!? 俺と同じ大学じゃねぇか!」

