退屈な講義を終え、俺はいつものようにバイト先に向かった。
大学に入学して1カ月が経った。
ちょっと前までは大学生活が未知のように感じていたのに、案外過ごしてみると高校時代と大きく変わるわけじゃない。
クラスみたいなのはないけれど、決まった講義を受けてサークルに入って、バイトもそれなりに大きな役割を任されるようになった。
順調にいってるんだと思う。
何も問題はない。
でもずっと……俺の中には常に埋まらない穴が空いていている。
『……なあ、陽。……俺たち、もう無理かもね』
高校二年の冬。
俺の恋は終わった。
今でもあの時のことを思い出す。
あの時から時計の針が止まってしまったみたいにそこから動き出すことが出来ない。
「……陽」
彼の名前をぽつりとつぶやいては俺は、打ち消すことしか出来なかった。

