「はぁ……はぁ……」
『……はい』
スピーカー越しに隼人の低い声が響く。
……いた!
「陽だけど」
『陽……? どうしたんだ急に』
「ちょっとな」
さすがに会いたくなったなんて言えなかった。
オートロックが解除される。
俺はエレベーターに乗り、到着と同時に廊下を走る。
角部屋のドアが開くのが見えた。
「陽、なにかあっ──」
「隼人ッ!」
俺は、驚いて出てきた隼人の胸に勢いよく飛び込んだ。
「うおっ……!?」
隼人がよろめきながらも、しっかりと俺を受け止める。
「ど、どうした? 」
抱きついたまま、俺はあいつの背中に腕を回しぎゅっと力を込めた。
隼人の匂い。
温かい体温。
ドクンドクンと響く心臓の音。
そのすべてが、俺を安心させてくれる。
「とりあえず入ろうか」
そう言って隼人は家の中に入れてくれる。
でも玄関先でクツも脱がず俺たちはぎゅっと抱き合ったままだった。
「どうしたの?突然来て……俺は嬉しいけど」
隼人が戸惑った声を出す。
俺も言おうと思っていることが全然まとまってない。

