「でも、負けませんから」
「ええっ……」
「今は広瀬さんのこと好きなのかもしれないけど……私はアピールし続けます! 覚悟しといてください」
彼女はそう宣言すると、ニコッと笑って駅の方まで走っていった。
なんか宣戦布告されてしまったような……。
でも不思議と、嫌な気持ちはしなかった。
しっかり言えて良かった。
これで胸を張って、隼人の隣にいられる気がする。
あとは、隼人に許可を取らずに服部さんに言ってしまったことだけど……。
(どう思うかな)
時計を見る。
隼人は補習があるって言ってけど、さすがにもう終わってるか。
だとしたら家にいる……?
なんだろうな。
今、無性に隼人に会いたい。
気付けば、俺の足は動いていた。
アパートに帰る道とは逆方向。
隼人のマンションへと続く道を、俺は走り出していた。
カバンが背中で跳ねるのも、息が切れるのも気にせず夜の街を走り抜ける。
マンションの前まで来ると、呼吸を整える間もなくインターホンを押した。

