彼女の気持ちは知ってる。
隼人のことが好きでその気持ちを伝えたくてきっと一生懸命作ったんだろう。
「し、失礼しますっ!」
彼女は震える声でそう言うと、逃げるように改札の方へと走っていってしまった。
人混みの中に消えていく小さな背中。
気まずい沈黙が流れる。
「……行こうか」
隼人は何事もなかったかのように歩き出した。
隼人の誠実さは嬉しかった。 俺のために、あそこまでハッキリ断ってくれたんだって分かるから。 でも……それ以上に、どうしようもない罪悪感が俺の胸を押しつぶしそうだった。
みんな誠実なのに……。
俺、最低だ。
服部さんの泣きそうな顔が、頭から離れない。
俺は隼人と付き合っている。 恋人同士になったんだ。 それなのに、応援するフリをして……影で付き合ってるなんて。 そんなの、人の気持ちをもてあそぶのと一緒じゃないか。
(……ちゃんと言わなきゃ)
このまま協力するフリなんて続けられない。
俺はぎゅっと拳を握りしめた。

