「……高校生の頃は、陽に嫌だって思われないように気を付けないとってばっかり考えてた」
「えっ、隼人が……?」
「そうだよ。だって告白したの俺だし……距離感間違えて無理って言われたらどうしようとかばっかり考えてた」
意外だった。
余裕たっぷりに見えていた隼人がそんなことを考えていたなんて。
お互いにあったんだろうな。
自信のないところ。不安なこと。伝えられずにモヤモヤしていたこと。
それを吐き出すことなく進んでしまって俺たちは別れることになった。
「でも、もう間違えない」
隼人が顔を上げ、強い眼差しでこちらを見つめる。
「今は包み隠さず全部、俺の気持ち伝えるつもりでいるから」
──ドキン。
「包み隠さずってどういう……」
「それ聞いちゃう?ズルいな、陽は……」
すると隼人は俺の手を引いた。
目の前には、真剣な顔をした隼人。
「……陽」
名前を呼ばれただけで、これから何が起こるのか分かってしまった。
「好き」あいつの顔がゆっくりと近づいてくる。いつもならもっと色々考えたと思う。

