バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


隼人は俺の服を上から下まで見ると、嬉しそうに目を細めた。

「陽……その服、似合ってるね」
「……っ! そ、そうか?」

ああ、クッソ……。
もう普通に出来てねぇじゃんか。

俺たちは並んで歩き出し、駅ビルに入っている映画館へと向かった。
映画館のロビーは、週末ということもあってカップルや家族連れで賑わっていた。

俺たちはチケットを発行するとも、薄暗いシアター内へと足を踏み入れた。

席は、後ろから二列目の中央。
隣り合って座るだけで、隼人の体温が伝わってくるようで落ち着かない。

照明がゆっくりと落ち、館内が闇に包まれる。
その時、ひじ掛けに置いていた俺の右手にそっと手が触れた。

「……っ」

横目で確認すると、隼人の長い指がぎゅっ、と指を絡められる。

(えっ、ちょ……!)

「は、隼人……っ!」

こんなとこで、急に手なんか繋いでくるなんて反則だろ!俺は顔が熱くなるのを感じて、助けを求めるように隣を見た。
すると俺の視線に気づいたのか、隼人は俺の真っ赤になっているだろう顔を見て口角を上げた。

そして。 繋いでいない方の手の人差し指を、すっと自分の唇に当てて微笑む。