バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


その時。

「ダメですよ」

すっと入ってきた隼人の手が美咲さんを止めた。
そして隼人は俺の肩を自分の方に抱き寄せると静かに言い放った。

「陽の頬、触っていいのは俺だけなので」

俺はカッと顔が熱くなるのを感じた。

おまっ、なに言って……!
周りはシン、と一瞬だけ時が止まった気がした。

しかしすぐに黄色い声があがる。

「……きゃあああああ!!」
「ありあり!やばい尊い……! ごちそうさまです!」

美咲さんは手を口に当てて目を輝かせている。

「……っ、隼人!」

俺は真っ赤な顔で隼人を睨んだ。
こんな公衆の面前でなんてこと言うんだよ!
しかし隼人は、悪びれる様子もなく平然とグラスを傾けている。

「……本当のことだろ」

ボソリと呟かれたその言葉に、俺の心臓はまた大きく跳ねた。ああ、もうしらね!