そうか。
忘れる、わけない……。

なんとなく、この言葉が聞けてよかったような気がする。

俺との恋を忘れないでいてくれたんだから、それでいい。
これからはまた昔みたいに友達同士に戻ったりすることも出来るのかもしれないな。

「まぁ大学一緒だってことも発覚したし、また会う機会もあると思うけど、友達としてまたよろしくな?」

俺が笑顔を作って伝えると、隼人は小さくつぶやいた。

「友達……」

その目はなんだか寂しそうで、隼人がなにを考えているのか分からなかった。

「……じゃ、俺こっちだから」

気まずさを振り払うように、俺は隼人に背を向け、アパートへの道を歩き出そうとした。

しかし、その瞬間。
ガシッ、と強く腕を掴まれた。

「え……?」

振り返ると、隼人がまっすぐ俺を見ていた。
俺を捉えるような鋭い眼差し。

「友達として、じゃなかっただろ」

空気が一瞬で張り詰める。

「なっ……」

そんなこと分かってる。
俺たちが過ごしたあの3カ月は友達としてじゃなくて、恋人として……。

でも隼人は遊びだったんだろう?
だったらそんなことわざわざ言う必要ないだろ。