バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


「……あっ」

俺が拭いていた手と、あいつがカップを置いた手がカウンターの上で不意に触れ合う。

指先が熱くて……なんだか恥ずかしい気持ちになった。

「わっ……つ!」

俺は、変な声を出して大げさに手を引っ込める。
そんな俺を見て、隼人は不思議そうな顔を浮かべていた。

いやあ、なんか妙に研ぎ澄まされてしまうというか……意識しちまうというか……。

前付き合ってた時ってどんな顔してたっけ?
あの時はおためしみたいな感じで付き合ったのもあって、なんか今の方が緊張するんだが……!

「陽、次これね」
「……っ!」

客に聞こえないよう低い声で、俺の耳元に次のドリンクの順番を囁く。

──ドキ。
ち、近いって……。
なんか今日隼人の距離近くねぇか?

「お待たせしました!」

ドリンクを提供する。
俺は人がいなくなったタイミングで隼人に小声で言った。

「……お前、バレるって……!」
「は?」

隼人は、よく分かってない顔で俺を見る。

「なにが?」

(なにがって……!分かるだろう!俺たちのことだよ)

隼人と付き合ったのはいいが、男同士だ。
まだまだそういうのに寛容な人ばかりではないから、この付き合いは気づかれてはいけない!

そう絶対に!