少しラッピングがヨレてしまったかもしれない。
「……隼人、これ」
俺がクッキーを差し出すと、隼人眉にシワを寄せた。
俺が桜ちゃんと一緒にケーキを食べたついでに買ったと思われていたクッキー。
でも本当は違う。
「これ……本当は隼人のために選んだんだ」
「えっ」
隼人は驚いたように声をあげた。
「その、初給料入ったからお礼したくて……でもそういうのよく分からないから、サークルの女の子に聞いたんだ。隼人、甘いの食べてたから……コーヒーと一緒に食ったら喜ぶかなって」
もごもご伝えると、隼人は嬉しそうな顔をしてこっちを見つめた。
「……そうだったんだ、俺勘違いして……ごめん」
俺はぶんぶんと首をふる。
「俺もちゃんと言わなかったし……」
彼は愛おしそうに包みを受け取ると封を開けて一枚口に運ぶ。
「……うまい」
袋からもう一枚取り出すと俺の口元へ突き出してくる。
「陽もあーん」
「えっ、俺は」
「いいから」
断りきれずにパクッとくわえると 隼人は満足そうに目を細めた。
口の中に広がる甘さを噛みしめる。
目が合うと自然とふたりで笑った。
ようやく……あの時の気持ちと今の気持ちが報われた。
「美味しいね」
「ああ」
もう一度、俺たちは特別な関係になって毎日を過ごしていく──。

