「今は?」
「今は実家が近くなんだ。だけど、一人暮らしさせてもらってる」
「へぇ」
隼人も人生経験的な感じなんだろうな……。
最初こそ戸惑ったものの、会話は久しぶりということもあってか、ポンポン出てきた。
「バイトはいつからやってんの?」
「高二の終わりから」
「うわ、古株じゃん……」
高校生の頃から、カフェで働いているとは思わなかった。
俺たちが別れてからの、二年半。
俺が知らなかった隼人の時間が、そこにはあるんだろう。
駅前の交差点。
赤信号で、俺たちの足が止まる。
昔から必要最低限のことしか言わないところは、本当に変わってねぇな。
なんか……あの時に戻ったような変な気持ちになった。
「まぁ、でも安心したわ」
俺は笑顔を作って言った。
「俺と会ってもお前……全然反応しないから、俺のこと忘れたかと思ったわ」
冗談半分、ふざけ半分で伝えると、隼人は静かに言った。
「……忘れるわけないだろ」
──ドキ。

