停電だ。
「うわっ……」
俺はとっさに身を縮こまらせた。
「……大丈夫か」
暗闇の中から、隼人の低い声が聞こえる。
「お、おう……ビックリしたけど大丈夫」
「非常灯つくと思うからじっとしてて」
静かな声。
ガサゴソと衣擦れの音がして、隼人の気配が少し近づいた気がした。
今しかない。
暗闇のおかげで、隼人の顔を見なくてすむ分、言えるかもしれない。
「なぁ、隼人……」
俺は話を切り出した。
「この間のこと……ごめん」
俺が伝えると、隼人がこっちを見た気がした。
「隼人の気持ち全然考えてなかった。好きだって言ってくれてたことに、甘えてたのかもしれない」
まっすぐに伝えないと。
いつか気持ちが整理されるかもしれないなんて、甘えでしかない。
自分の気持ちは自分で向き合わないと答えなんて出るわけないんだ。
すると、隼人は言った。
「……もういいよ。俺も感情を押し付けすぎたと思ってる。前付き合っていたから、今も同じ気持ちなんてことは、ないのは知ってる」
隼人……。
違うんだ。
ちゃんと伝えないと。
俺も同じ気持ちだって。

