今なら話せるかもしれない。
「なぁ、隼人……」
俺がそう切り出した時、隼人が従業員用の出口ドアに手をかける。
──ザーーーッ!!
ドア一枚を隔てた向こう側から、まるで滝壺にいるかのような轟音が響き渡った。
風圧でドアがガタガタと激しく揺れている。
これは……。
「……陽、やめておこう。この中で帰るのは危ない」
俺の隣に立っていた隼人が、低い声で止める。
たしかに、これはただの豪雨じゃないな。
風でなにか飛んで来たりするかもしれない。
「……もう少し、雨が落ち着くまでここで待機しよう」
「そうだな」
俺たちはバックヤードの小さな休憩スペースに戻り、この猛烈な嵐が過ぎ去るのを待つことにした。
俺にとってはちょうどいいチャンス……。
パイプイスに二人並んで座る。
今だ、今ならじっくり話せるはずだ。
『分かりやすいくらいに伝えないと』
俺は意を決して隼人に話しかけた。
「あのさ、隼人……」
その瞬間。
──バチッ。
「……っ!?」
不意に視界が真っ暗になった。

