隼人は言う。
「ふたりも無理しないで気を付けて帰ってね」
「はい、お疲れ様です」
俺と隼人はふたりに声をかけると、美咲さんと橋本さんは揃って店を出ていった。
よりによってこんな時に隼人とふたりきり……。
いや、でも話すチャンスが出来たって思うべきか……。
でも昨日の言葉……。
もう一度言われたらダメージがすごくて、もう話せなくなりそう……。
「こんなことあるんだな……」
俺が小さくつぶやくと、隼人は静かに答える。
「台風とか雪とかだとたまにあるよ。そういう時は大抵俺が残る」
「隼人も大変そうだな……」
フロアのBGMを消すと、外で荒れ狂う風雨の音だけが不気味に響く。
店長からも今日は早めにしめちゃっていいと言われて、俺たちは閉め作業に入ることになった。
「……とっとと終わらせよう」
「うん」
俺たちは手分けして客席のイスを上げ、床を掃きコーヒーマシンを洗浄していく。
いつもは誰かしらいるバックヤードも今はシン、と静まり返っている。
一通り作業を終えて、俺たちはバックヤードで私服に着替えた。

