「渡せなかったの!?」
「あ、ああ……」
俺はうつむく。
「渡せないどころか距離が開いちまって……なんかもう渡せなそうだからもういいかな~って。たぶんみんなで食った方が上手く食えると思うし?」
俺が早口でそう言うと、桜ちゃんはぶんぶんと激しく首を横に振った。
「ダメだよ!陽くん、それ……好きな人にあげるんでしょ?」
「えっ」
心臓が跳ねる。
俺は動揺しながら桜ちゃんを見た。
「えっ、あ、いや……好きな人とかじゃ……」
「分かってるよ。だってこのプレゼント選んでる時の陽くんの目、すっごくキラキラしてたもん」
桜ちゃんはまっすぐに俺を見て言った。
「どれにしようかなって迷って……大事な人に喜んでもらいたくて買ったんだよね?」
そっか……俺、周りからもそんな風に見えてたのか。
周りから見てもすぐ分かるのに、なんで自分では気づかなかったんだろう。
俺はじわりと視界がにじんだ。
そうだ。
隼人に喜んでほしくて……あいつが笑ってくれる顔が見たくてこれを選んだんだ。
「……俺、上手に渡せなくて……」
震える声でつぶやくと、桜ちゃんは優しく俺の背中を叩いた。
「陽くん。自分の気持ちは分かりやすいくらいに伝えないと、案外相手には伝わってないものだよ」

