翌日の朝はどんよりとした厚い雲が垂れ込め、窓の外は荒れ狂うような風が吹いていた。
大型の台風が直撃するらしい。
休校にならないかと願ったが、本格的になるのは夜かららしく今日はしっかりと授業が入っていた。
大学へ向かう俺の足取りは重い。
『俺、もう陽のこと好きでいるのやめる』
昨日の夜。
隼人に言われた言葉が、頭の中から離れない。
ついに隼人に愛想を尽かされてしまった。
カバンの中には、前に桜ちゃんと一緒に選んだクッキーの箱が入っている。
もうきっとこれを渡すことも出来ないだろうし、見る度に切なくなるのでみんなで食べようと思ってきたクッキー。
「あ、陽くん!」
講義棟の通路を歩いていると、元気な声に呼び止められた。
ウワサをすれば……とはよく言うもので、桜ちゃんがこっちにやってきた。
「おはよー!すごい天気だね」
「……おう、萎えるよな」
まるで俺の心の中を表してるみたいだ。
すると興味津々に聞いてきた。
「そういえば陽くん……前に一緒に買ったクッキーお世話になったバイト先の人に渡せた?」
俺は言葉に詰まる。
「……それが」
俺はカバンから、行き場をなくしたラッピングの箱を取り出した。
「これ、よかったら一緒に食わね?」
俺が力なく桜ちゃんに差し出すと、彼女は目を丸くした。

