どうにかしてこの空気を変えないと。
そう思った時、隼人が口を開いた。
「さっきの話の続きだけど……」
足が止まる。
隼人は俺の方を見ずに、前を向いたまま言った。
「俺、もう陽のこと好きでいるのやめる」
──ドクン。
心臓が嫌な音を立てた。
淡々とした口調が、現実味を帯びて胸に刺さる。
「今まで迷惑かけてごめん」
隼人は静かに終わりを告げる言葉を放った。
苦しい……。
隼人から別れを切り出されたあの時のように心がぎゅっと握りつぶされて、上手く呼吸ができない。
「はや、と……」
「……じゃあな」
隼人はそれだけ言うと、俺に背を向けた。
「待っ……」
伸ばした手は空を切る。
遠ざかっていく背中がやけに小さく見えた。
俺は一歩も動くことができず、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。

