仕事を終えた夜。
今日は人も少ないということではじめて俺と隼人と服部さんで閉め作業をすることになっていた。
閉店作業を終え、店のカギを閉め三人で夜道を歩く。
服部さんは当然のように隼人の隣にピタリとつき、楽しそうに専門学校の話をしていた。
俺は、自然と一歩後ろを歩いていた。
なんか、毎日楽しくない。
隼人と一緒にいられるバイトも、その後話す時間も楽しかったのに、今はちっとも楽しくない。
苦しくてモヤモヤしてばっかりだ……。
「あ、見て。あの二人、めっちゃお似合いじゃない?」
「うわ、美男美女。彼女かな?」
すれ違った学生グループのそんなひそひそ話が嫌でも耳に届いた。
たしかに、服部さん……可愛いもんな。
ザ、女の子って感じで……歩いていたらふたりがカップルに見えるのも無理はないだろう。
「……っ」
息が詰まる。
俺の心は重い鉛のように沈んでいった。
「じゃあ、私こっちなので! お疲れ様でした!」
角を曲がったところで、服部さんが深々と頭を下げて走り去っていく。
嵐が去ったように、急に静かになった。
ふたりきりになった俺と隼人。
気まずい沈黙が重くのしかかる。
隣を歩く隼人は、あれから一言も喋らない。
怒ってるよな……。
俺はチラチラと隼人の横顔を盗み見た。

