するとその時。
「……そういえばさ」
隼人が口を開いた。
「っ!」
持っていたダスターを落としそうになってしまう。
恐る恐る振り返ると、隼人が作業の手を止めこちらを見ていた。
「陽の好きだった漫画の新作……今週発売されるってよ」
「……え」
俺は驚いて作業の手を止めた。
久しぶりに声掛けられた……。
──ドキン、ドキン、ドキン。
心臓がドキドキと音を立てる。
「ほら、ずっと休載してたって言ってたじゃん」
「あ、ああ……そっか新刊ようやく出るのか」
なんでもないように答えながらも俺の心臓はドキドキと強く音を立てていた。
久しぶりに隼人と話せてる……。
もう、怒ってないってことか?
それとも気まずすぎるからさすがに話しをしてくれただけ?
まだ話すのに緊張してしまう。
でも今なら、ちゃんとあの時のこと……謝れるかもしれない。
「なぁ、隼人……」
俺が隼人に向き合ったその時、隼人は言った。
「服部さんも見てるって言ってたぞ」
えっ……。
俺はそのばで固まる。
服部さんの話……?
なんでそれがすぐ出てくるんだ。
ずきりと心臓が痛み出す。
ふ、ふたりはずっと一緒にいるもんな。
そういうプライベートな話だってするよな。
分かってる。
分かってるのになんか……ずげぇモヤモヤしてしまう。

