バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


はぁ……めちゃくちゃ俺、ネガティブになってる気がする。

「広瀬くん、レジ代わるから休憩入っちゃって」
「はい……」

美咲さんと交代をしてバックヤードに戻ろうとした時、ストックルームから彩香ちゃんの「きゃあっ!」という短い悲鳴が聞こえた。
自然と視線がそっちに向かう。

するとガラガラと、棚に積んであったシロップのボトルが数本、床に転がった。
どうやら、足を滑らせたらしい。

「大丈夫か?」

一番近くにいた隼人が、とっさに彼女の腕を掴んで支えていた。

──ドクン。
あんなに近い距離で……。

「す、すみません! 三上さん! わ、私……!」

そして顔を真っ赤に染める服部さん。

「怪我は?」
「な、ないです……」

俺は、その光景を見てハッキリと分かった。

服部さんは今、隼人にドキドキしてる。
嫌だ……。

俺がコケた時と同じように抱きとめるみたいで……見ていたくない。
俺はぎゅうっと目をつぶると、足早にその場を去っていった。

彩香ちゃんがわざとじゃないのも、頭では分かっている。
でも胸の奥がザワリ、と音を立ててから、モヤモヤが身体全体に広がっていくみたいだ。