バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


エスプレッソマシンの蒸気に紛れて、俺は小さくため息をつく。
そんな時、新人の服部さんの声が聞こえてきた。

「三上さーん! ここ、どうやるんでしたっけ?」
「……それは、こう」
「わぁ、すごーい! さすが三上さん!」

カウンターの向こうで、彩香ちゃんの明るい声が響く。
最近話しかけられなかったのには、隼人が完全に俺から外れて服部さんの新人研修に入っているというのもあった。

だんだん俺とシフトが被らなくなり、店で一緒に立つことも少なくなっていった。

しかも……。
……なんか、いい感じなんだよな。

「三上さんって、意外と筋肉あるんですね!触っていいですか?」
「……仕事中だぞ」
「えー、ケチー!」

服部さんは、明らかに隼人を狙っていそうで……ことあるごとに隼人のそばに行き、上目遣いで話しかけ、ボディタッチも多い。
ああいう真っ直ぐで無邪気な子に言われたら隼人だって揺らぐことがあるかもしれない。

俺みたいにウジウジ悩んで、勝手に勘違いして、傷つけるような面倒くさい奴とは大違いだもんな。