俺と付き合うことにしたのだって、きっと気まぐれで遊び程度に関わっただけだったもんな。

隼人にとっては、俺との三ヶ月なんてもうどうでもいい過去なんだろうか。
そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。

バックヤードには人が何人かいて、挨拶をさせてもらった後にバイト先を出ることになった。

あーあ。
なんか、忘れられてたしちょっと切ない気分……。

そんなことを思いながら歩いていると。

「……広瀬」

俺は隼人に呼び止められた。

「……髪、染めたんだな」

低い声が、裏路地の湿った空気に響く。
俺は、一瞬なにを言われたのか分からなかった。

「え……」

心臓が喉元まで跳ね上がってきた。

忘れてたんじゃ、なかったのか?

「あ……うん。大学デビュー、みたいな……」

俺は隼人の視線から逃れるように、自分の染めた茶色い髪先に指を絡ませた。

「似合ってるよ」

淡々とした声が響く。