闇サイトハンター

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

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 山並郁夫とは、俺のこと。
 俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。
 長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。
 ところが、人生、思ったようにはいかない。

 俺は、隊長大文字伝子と運命的に出逢ったことで、今後の方針を固めた。
 それは、『闇サイトハンター』として、EITOに、いや、大文字伝子に協力していくことだ。

 ある日。俺は「預金の調整」をする為、銀行に出向いた。
 そこで、出くわしてしまった。銀行強盗事件だ。
 高齢者のオヤジを盾にとり、強盗はお決まりの台詞を言った。
 金を集めて、バッグに詰めろ。バッグはこれだ。強盗の男は、オヤジに拳銃を突きつけて、バッグをカウンター内に放り投げた。
 「俺は、先行きがあまり長くない。先に俺を殺してみろ。隙が出来るぞ。銀行員でも勝てるかも知れないな。」

 「ジジイ。命が惜しくないのか?」「今、言っただろ?誰でも、命乞いするから思い通りになると思うなよ、若造。平成産まれか?まさか、令和生まれじゃないよな?」
 オヤジは、明らかに時間稼ぎをしている。警報スイッチを早く押せよ!女子行員。
 ん?目が泳いでいる。スイッチを押したようには見えないが?

 オヤジはしびれを切らしたのか、自分で体(たい)を交わして、体を捻り様、強盗の男の拳銃を手刀で叩き落し、気合いで男の肩を外した。次いで、自分の腰に巻いていた背筋矯正ゴムベルトを外して、手錠代わりに男の腕に巻き付けた。

 女子行員が、そっと、店の奥に消えた。
 俺は、思わず叫んだ。「共犯者が逃げたぞ!!」
 オヤジは、スマホを取り出し、誰かに指示をした。
 やはり、ただ者ではない。
 俺は、俺の後方の利用客の女子高生が110番するのを聞いた。

 5分後、警官が何人かやって来た。ここは駅前の銀行だ。
 駅前に交番があるのを思い出した。
 警官の1人は、オヤジの方を逮捕しようとしたので、店長が「違います!」と事情を話した。
 他の警官は、オヤジに謝罪し、ゴムベルトを返した。
 警官達が去って行った後、オヤジは、俺に「何故、共犯だと?」「スイッチを押すふりして推さなかったから。俺の位置からは見えたんだ。」「そうか。」
 俺は、ATMに向かい、「何もせず」に銀行を出た。
 それとなく、見渡すと、オヤジの電話の相手らしき男が、共犯の女を警官に引き渡していた。

 俺は、150メートル歩いて、別の支店で、残金を僅かにして、別の口座に振り込んだ。
 タクシーで帰宅して、俺のPCで、その口座から振り込み直し、口座をクローズした。
 買物に行かなくて正解だったな。備蓄はある。災害に備えて、では無く、すぐに移動出来るようにだ。
 大家は知り合いだ。急用が出来て、「引っ越しした」というテイにして貰った。
 無論、デスクトップPCの中を「掃除」してから。移動はノートPCがあれば良いのだ。

 1時間後。隠れ家に到着してから、大家から『暗号』がSNSに上がった。
 やはり、あのオヤジが俺をチクったか。
 オヤジの正体を探ってみた。大手の反社なら大抵わかるのだが、分からない。
 待てよ?大手?大手じゃない反社・・・そういうことか。
 今度、改めて調べよう。「ツテ」がない訳でもない。

 更に一時間後。暫定的な食料を買いに、近くのコンビニに寄った。
 店内放送で、銀行強盗のことを言っていた。
 コンビニでは、テレビは置いていない。尤も、俺は「撮影」されないように注意はしていた。110番娘のスマホにも映っていない筈だ。
 俺はスパイじゃない。闇サイトハンターだ。
 趣味でハッキングを再開していたが、大文字伝子に出逢って、考えが変わった。
 EITOに協力することにしたのだ。
 EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す。
 ダサイ名前だが、『反テロ組織』というのが気に入っている。
 ノートPCをデスクトップPCにリンクし、また『作業』を始めた。
 あん?ピスミラか。4K新聞?またかよ。懲りないなあ。
 こっちは、本物の『ジジイ』か。ナイフガン輸入?
 こりゃあ、いけない。EITOにハッキングして、『注意喚起』しなくちゃな。
 俺って、何て良い奴なんだ。「正義の味方」?「ダークヒーロー」?
 いや、「闇サイトハンターさ。」
 ―完―