闇サイトハンター

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 山並郁夫とは、俺のこと。
 俺は、『殺しの請負人』、いや『殺し屋』になる筈だった。
 長い間、あちこちに『傭兵』で参加していた俺は、あるコミックを読んで『殺し屋』になることにした。
 ところが、人生、思ったようにはいかない。

 だが、「闇サイトハンター」になって、俺は変わった。
 「影の正義の味方」になるのだ。
 大文字伝子様の為に。

 闇サイトは、ある程度時間開いて、閉じる。まるでモグラのように。
 それに、「年中暇な」若者が引っかかる。まるで「疑似餌」に魚が飛びつくように。
 超一流ハッカーの俺は、その「開いて閉じる」サイトの様子を記録するシステムを開発した。年中24時間見張っている訳にはいかないからだ。

 闇サイトが大流行りだ。
 だが、そのお陰で真サイトであるSNSも大流行だ。
 今は選挙の真っ最中。
 やがて、当選者は『先生』となって、大手を振って歩く。
 数々の『特権』の『覇者』だから。

 街宣カーが煩い。
 気分転換に、新アジトの近くのコンビニに行ってアイスでも買うことにした。

 入口正面の『横断歩道』の前に、街宣カー。
 入った所で、2人の男が揉めている。
 「だから、マナー守れよ。」「法律違反じゃない。」
 「マナー違反だよ。」

 俺は、素早くスマホで「点字ブロック」を調べてみた。
 『点字ブロックは視覚障害者の安全な移動を助けるための重要な設備であり、上に駐車することは絶対に避けるべきです。点字ブロックは、視覚障害者が道案内として頼りにしているものであり、その上に駐車すると、道に迷ったり、転倒などの事故につながったりする可能性があります』
 俺は、その文章を声に出して読んでみた。
 実は、闇サイトでもSNSでも、この手の手合いが「蔓延って(はびこって)」いる。

 「ああん、なんやとワレ、ケチ付けるんか?」
 「今度は『偽関西弁』か。関西人に失礼だな。」
 男は、喧嘩の相手を俺に切り替えた。
 パトカーのサイレンがして、近くに駐めた。

 「誰が110番したんですか?」
 「お店の人です。この人が、この人を突き飛ばしました。ほら、怪我してるでしょ。」
 俺は警察官の1人に「マナー師匠」の腕を見るように指示して、俺はアイスを買いに店に入った。
 精算をすると、もう1人の警察官が店員に尋ねに入った。
 さっきの2人と最初の警察官が話しているのを見て俺は、ゴミ捨て場にあった雑巾を、問題の街宣カーの後輪に引っかけて叫んだ。
 「あ。血の付いたシャツがタイヤに!!」
 警察官は、血相変えて確認に来た。
 マナー師匠は、逃げようとする街宣カーの男を捕まえて離さない。

 そっと離れ暫く歩くと、点字ブロックの上に台を置き、側に立て看板を置いてメガホンで怒鳴っている女がいた。アイスを食べ終えた俺は、折り畳みの杖を出して杖を突きながら、点字ブロックに添って視覚障害者特有の歩き方をして近づいて行った。
 そして、立て看板で転ぶ。

 聴衆の何人かが助け起こしてくれた。
 「どこのどなたか存じませんが、ありがとう。そこの立候補者さんは、視覚障害者は投票出来ないからって、差別する人が多いって聞くけど、『点字投票』や『代理投票』って知らないんでしょうね。確かに点字ブロックを踏んでも上に何を置いても『法律違反』じゃない。でも、『社会のマナー違反』です。今、この方の名前と政党名を覚えました。私は、この方やこの政党には投票しません。『社会のマナー』や『有権者の権利』を無視するのは、【下品】ですね。」

 聴衆は、立候補者を引きずり降ろし、台を撤去した。

 素早く、その場を去ると、コンビニ前の車がレッカー車で運ばれ、先ほどの男がパトカーに乗せられていた。

 帰宅して、シャワーを浴びた。
 アイス一個で「正義の味方」しちゃったな。

 まあ、間接的に「EITOの伝子様」の役に立ったかな?

 後で姉貴に電話しよう。

 ―完―

 ※『点字投票』や『代理投票』に興味のある方は、自治体に問い合わせするか、ネットで調べて下さい。自治体によって、対応は違うと思います。