いかがだったかね、吾輩の話は。
 しかしカイトという青年、吾輩があんなふうに見えていたなんて。
 君にはちゃんと、吾輩の良さがわかるだろう? 吾輩がいかに気高く、高貴で、気品に満ちて──

 ──なに? もっと聞きたい?
 やれやれ、これだから人間という生き物は強欲と言われるのだ。

 まあ、いい。吾輩も久々に昔話などしてみたら、どうにも興が乗ってきてしまってな。
 どれ。君が吾輩の名前を考えている間に、もうひとつ、昔話をしてやろう。

 あれは、そう──まだカイトとも出会わぬ、少しばかり若い頃の話だ。