写真から開いても、ソフトから開いても、辿り着くのは同じページ。
つまりこれは、あえて作りかけを残している。
「製作途中で部員が辞めただけ、って感じじゃ、ないですよね」
圭吾が確かめるように問い掛けてきた。
「ねぇな。写真や動画を開くと製作途中のページに飛んで、ご丁寧に白紙レイヤーが埋まるなんて、凝り過ぎ。わざと設定しなきゃ無理だ」
「それなら、空間に浮かぶ謎のレイヤーも、オバケも、わざとですかね」
「見付けさせるために、わざと作ったヒントかもな。これを仕掛けた奴は、ばらけたレイヤーを全部見付て、シネマトグラフを完成させろって言いたいんだろ」
まるでパズルのピースのように、一枚ずつ隠したレイヤーを見付けさせる。
写真部員なら、レイヤーを見付ければ組み立てて、シネマトグラフを完成させたくなる。
「一体、誰がこんな仕掛けを? 誰に向けて作ったんでしょう。何のために?」
圭吾の三つの質問の内、二つなら正解を出せる自信がある。
「それは、この三枚のレイヤーでシネマトグラフを仮統合してみれば、わかる」
「まだ二枚、白紙なのに?」
「だから、仮なの。それなりには、なるよ。ちょっと代わって」
圭吾の隣に座って、マウスを握る。
「まずはメインレイヤーを重ねる。順番は、夕日が一番下、その上に人物。で、藤棚かな」
レイヤーを重ねていく。
神々しい夕日に照らされた藤棚を見上げて微笑む浅沼涼貴の写真が出来上がった。
「んで、サブレイヤーを乗せてみるっと」
光や色味を調整するためのサブレイヤーを重ねていく。
順番は俺の感性だから、製作者の思惑通りかは、わからないけど。
「多分、こんな感じかなっと。で、統合してみるな」
さっきよりも高度が増して、全体が明るくなった。
ちょっとワクワクしてきた。
自分の作品じゃないのが悔しいけど。
(んーっ。色味とか彩光とか、もっと調節してぇけど、勝手にいじれねぇよな。そもそもレイヤー足りてねぇし、今いじったら本当の完成品が台無しになる。我慢我慢)
メインレイヤー三枚だけでも充分、綺麗だ。
もっと綺麗に仕上げたくなる。
そんな好奇心を、ぐっと飲み込んだ。
「よし、プロジェクトしてみよう。これ多分、動画だから、投影したら動く」
「そうか。浅沼先輩の写真、動いてましたもんね」
二番投影機から、シネマトグラフを投影する。
空間に立体写真が映し出された。
空から差し込んだ淡い光が、藤棚と人物を照らし出す。
照らした光が零れて落ちる様は、如何にも本物だ。
なのに現実でない、人の手で作った景色だ。
揺れる藤棚の中で、浅沼涼貴が花に手を伸ばし、微笑む。
何かを囁くように口元が揺れた。
「答え、わかりました。これって絶対、榛葉先輩のシネマトグラフですよね。レベルが高すぎて、高校生が作ったなんて思えない」
「俺も、そう思う。だから仕掛け人は朝陽さんで、ほぼ確。メッセージの相手は」
「浅沼先輩、ですか」
メインレイヤーの真ん中に映る浅沼を見詰める。
「それしかねぇよな」
朝陽と浅沼は、写真部でチームを組んでいた。
浅沼は、自分は被写体だったと話していた。
朝陽が浅沼に残したメッセージ、と考えるのが妥当だ。
「何のためかは、俺にもわかんねぇけど」
俺は立ち上がり、写真の中に入り込んだ。
シネマトグラフは、立体画像が切り取られた仮想現実のように映し出されて、中に入れる。
動画の場合、中に入ると音が聞こえる。
隠れたメッセージなどを籠める趣向も多い。
(浅沼先輩の口元が動いているから、何かを言っているのは間違いない)
写真の中に入り込む。
中の景色までリアルな非現実で、あまりにも美しい。
悔しいくらい完璧な嘘の世界だ。
(俺も、これくらい綺麗なシネマトグラフ、作ってみてぇな)
微笑む浅沼に近付く。
口元は動いているのに、音声が聴こえない。
(どうしてだろう。音を吹き込んでない? それともまだ、ピースが足りないから?)
俺は立体写真の外に出て、遠巻きに眺めた。
「どうしたんですか?」
圭吾が横並びに立って、一緒に写真を眺める。
「声が聴こえないんだよ。レイヤーがあと二枚、足りねぇからかなって」
二人してじっくりと、写真を眺めた。
「とても綺麗だけど、バランスが悪い気がしますね」
「だなー。上ばっかり、ごちゃっとしてて、足元がスカスカ……あと二枚は、下部を埋めるような写真かなぁ」
光は全体を照らしているのに、藤棚と浅沼の顔が上部にあるせいで、写真の下部がスカスカに見える。
俺はパソコン画面に戻った。
メインレイヤーは二枚が、白紙のままだ。
「あと二枚、埋まらないと浅沼先輩の声は聞こえないんだろうな」
何かが足りないから、伝わらない。
このシネマトグラフも、過去の俺の想いも。
A2フォルダを探すが、他にそれらしい写真はない。
俺は腕を組んで首を捻った。
つまりこれは、あえて作りかけを残している。
「製作途中で部員が辞めただけ、って感じじゃ、ないですよね」
圭吾が確かめるように問い掛けてきた。
「ねぇな。写真や動画を開くと製作途中のページに飛んで、ご丁寧に白紙レイヤーが埋まるなんて、凝り過ぎ。わざと設定しなきゃ無理だ」
「それなら、空間に浮かぶ謎のレイヤーも、オバケも、わざとですかね」
「見付けさせるために、わざと作ったヒントかもな。これを仕掛けた奴は、ばらけたレイヤーを全部見付て、シネマトグラフを完成させろって言いたいんだろ」
まるでパズルのピースのように、一枚ずつ隠したレイヤーを見付けさせる。
写真部員なら、レイヤーを見付ければ組み立てて、シネマトグラフを完成させたくなる。
「一体、誰がこんな仕掛けを? 誰に向けて作ったんでしょう。何のために?」
圭吾の三つの質問の内、二つなら正解を出せる自信がある。
「それは、この三枚のレイヤーでシネマトグラフを仮統合してみれば、わかる」
「まだ二枚、白紙なのに?」
「だから、仮なの。それなりには、なるよ。ちょっと代わって」
圭吾の隣に座って、マウスを握る。
「まずはメインレイヤーを重ねる。順番は、夕日が一番下、その上に人物。で、藤棚かな」
レイヤーを重ねていく。
神々しい夕日に照らされた藤棚を見上げて微笑む浅沼涼貴の写真が出来上がった。
「んで、サブレイヤーを乗せてみるっと」
光や色味を調整するためのサブレイヤーを重ねていく。
順番は俺の感性だから、製作者の思惑通りかは、わからないけど。
「多分、こんな感じかなっと。で、統合してみるな」
さっきよりも高度が増して、全体が明るくなった。
ちょっとワクワクしてきた。
自分の作品じゃないのが悔しいけど。
(んーっ。色味とか彩光とか、もっと調節してぇけど、勝手にいじれねぇよな。そもそもレイヤー足りてねぇし、今いじったら本当の完成品が台無しになる。我慢我慢)
メインレイヤー三枚だけでも充分、綺麗だ。
もっと綺麗に仕上げたくなる。
そんな好奇心を、ぐっと飲み込んだ。
「よし、プロジェクトしてみよう。これ多分、動画だから、投影したら動く」
「そうか。浅沼先輩の写真、動いてましたもんね」
二番投影機から、シネマトグラフを投影する。
空間に立体写真が映し出された。
空から差し込んだ淡い光が、藤棚と人物を照らし出す。
照らした光が零れて落ちる様は、如何にも本物だ。
なのに現実でない、人の手で作った景色だ。
揺れる藤棚の中で、浅沼涼貴が花に手を伸ばし、微笑む。
何かを囁くように口元が揺れた。
「答え、わかりました。これって絶対、榛葉先輩のシネマトグラフですよね。レベルが高すぎて、高校生が作ったなんて思えない」
「俺も、そう思う。だから仕掛け人は朝陽さんで、ほぼ確。メッセージの相手は」
「浅沼先輩、ですか」
メインレイヤーの真ん中に映る浅沼を見詰める。
「それしかねぇよな」
朝陽と浅沼は、写真部でチームを組んでいた。
浅沼は、自分は被写体だったと話していた。
朝陽が浅沼に残したメッセージ、と考えるのが妥当だ。
「何のためかは、俺にもわかんねぇけど」
俺は立ち上がり、写真の中に入り込んだ。
シネマトグラフは、立体画像が切り取られた仮想現実のように映し出されて、中に入れる。
動画の場合、中に入ると音が聞こえる。
隠れたメッセージなどを籠める趣向も多い。
(浅沼先輩の口元が動いているから、何かを言っているのは間違いない)
写真の中に入り込む。
中の景色までリアルな非現実で、あまりにも美しい。
悔しいくらい完璧な嘘の世界だ。
(俺も、これくらい綺麗なシネマトグラフ、作ってみてぇな)
微笑む浅沼に近付く。
口元は動いているのに、音声が聴こえない。
(どうしてだろう。音を吹き込んでない? それともまだ、ピースが足りないから?)
俺は立体写真の外に出て、遠巻きに眺めた。
「どうしたんですか?」
圭吾が横並びに立って、一緒に写真を眺める。
「声が聴こえないんだよ。レイヤーがあと二枚、足りねぇからかなって」
二人してじっくりと、写真を眺めた。
「とても綺麗だけど、バランスが悪い気がしますね」
「だなー。上ばっかり、ごちゃっとしてて、足元がスカスカ……あと二枚は、下部を埋めるような写真かなぁ」
光は全体を照らしているのに、藤棚と浅沼の顔が上部にあるせいで、写真の下部がスカスカに見える。
俺はパソコン画面に戻った。
メインレイヤーは二枚が、白紙のままだ。
「あと二枚、埋まらないと浅沼先輩の声は聞こえないんだろうな」
何かが足りないから、伝わらない。
このシネマトグラフも、過去の俺の想いも。
A2フォルダを探すが、他にそれらしい写真はない。
俺は腕を組んで首を捻った。

