あれから毎日、部室内を隈なく探しているが、残り二枚のレイヤーは見付からない。
三人で部室もパソコンもカメラも探したが、それらしい写真は一枚もなかった。
土日も学校に来て、徹底的に探した。
にも関わらず、成果がないまま月曜日になった。
「これまでが順調だっただけ、かもなぁ。空間の謎のレイヤーもオバケも、わかりやすかった。気付いてもらうための仕掛けだもんな。そりゃ、そうか」
「けど、榛葉先輩は隠している訳ではないって、言ったんですよね?」
「そう言ってたけどな。浅沼先輩なら見付けられる場所にあるって」
浅沼は受験生だから、土曜日だけ付き合ってもらった。
嘘とか誤魔化しではなく、浅沼は残り二枚のレイヤーの在処を本当に知らない様子だった。
「その浅沼先輩は、今日は塾でいませんが」
「だなぁ」
机に突っ伏す俺の隣で、圭吾はあくせくパソコンのフォルダを検索している。
真面目な奴だ。
「気分転換しようぜ。飲み物、買ってくるけど、何がいい?」
「じゃぁ、御言葉に甘えて、ミルクコーヒーお願いします」
「りょ。相変わらず甘いの好きなー」
財布とスマホだけ持って、俺は部室を出た。
自販機まで歩きながら、朝陽のシネマトグラフについて、改めて考えてみた。
「謎の背景レイヤー二枚、部室のオバケで三枚目。残り二枚、急にヒントが減ったな」
パソコンの中に、それらしいデータはない。
部屋の中に痕跡もない。
カメラも確認済みだ。
画像は加工してある可能性が高いから、カメラはそもそも望み薄だ。
「置いてある。朝陽さんは、浅沼先輩が気付きそうな場所に置いてあるって、言ってたよな」
あの言い回しが、ずっと引っ掛かっていた。
『隠したわけじゃない。気付いてほしい人が気付ける場所に置いてきただけだ』
言葉を脳内で反復して、俺は足を止めた。
「……置いて、あるのか。ただ置くだけなら、部室である必要はないんだ。というか、ソフトもプロジェクターも、いらねぇんじゃねぇの?」
ざわり、と胸が騒いだ。
もしかしたら俺たちは、見当違いな場所を探しているんじゃないのか?
答えは、もっと身近でシンプルなんじゃないのか?
可能性に気が付いて、俺は部室に駆け戻った。
「圭吾!」
名前を叫びながら、部室のドアを開けた。
「早かったですね。ミルクコーヒーは?」
「それどころじゃねぇ、探すぞ!」
「コーヒーを?」
「USBを!」
「ゆーえすびー?」
圭吾が首を傾げた。
俺は、パソコンが載っている机の引き出しを漁った。
「圭吾は学校用クラウドで写真部のフォルダを探せ。共有からアクセスできる学校のクラウドに、写真部用フォルダがあるだろ。鍵、掛かってても良いから」
気が付いた顔をした圭吾が、パソコンに向かった。
「そうか、オバケとか謎のレイヤーみたいに、視覚的に見付ける必要はないんですね」
理解が速くて、助かる。
「そう。最初の発見がそれだったから、同じ仕掛けだって思い込んでたけど。最初の三つは気付かせるために、あえて派手な仕掛けにしたんだ。残りは、加工済みの画像をUSBやクラウドに保存しておけば、普通に使える」
朝陽がこっそり準備した加工済み写真をどこかに置いたのなら、浅沼に心当たりがなくても頷ける。
最初の三枚を派手な仕掛けにして存在を知らせ、浅沼に気付かせる。
「ソフトもプロジェクターも連動させる必要がないなら、浅沼先輩しかアクセスできない場所においておけばいいんですね」
「クラウドは部長じゃないとロック解除できないフォルダがあるだろ。USBだって、部長だけが持ってるようなのが、一個くらい……」
俺は圭吾と目を合わせた。
「どっちにしても、浅沼先輩がいないと、開かないですね」
「だな。とりあえず、目星だけは付けるか」
各々、探した結果、それらしいものは見付けた。
「写真部用のクラウドフォルダは、鍵がかかってますね」
「俺が見付けたUSBも、ロックがかかってるな」
「A2フォルダも最初は、ロックがかかっていました。浅沼先輩が開けてくれなきゃ、俺は背景レイヤーを見付けられなかったから、可能性は高いですよ」
「だといいなぁ」
互いの成果を見せ合って、息を吐く。
「とりあえずは明日かぁ」
「とっかかりが見付かっただけでも、収穫ですよ。休憩しましょう。今度は俺が飲み物、買ってきます。遥先輩はブラックコーヒーですか?」
「イチゴミルクが良い。疲れたから甘いの飲みてぇ」
「……可愛い」
「なんて?」
「行ってきます」
ほどなくして戻ってきた圭吾は、イチゴミルクとブラックコーヒーを両方持っていた。
「要らなくなったら、イチゴミルク貰います。遥先輩、いつも二口くらいで飽きるから」
「子供じゃねぇんだから。ちゃんと全部、飲みますぅ」
パックのイチゴミルクをチュウチュウしながら、ぶぅたれる。
俺を揶揄う圭吾はミルクコーヒーを飲んでいる。
中学の頃から甘いものが好きで、よく餌付けされていた。
変わらないな、と少しだけ思う。
三人で部室もパソコンもカメラも探したが、それらしい写真は一枚もなかった。
土日も学校に来て、徹底的に探した。
にも関わらず、成果がないまま月曜日になった。
「これまでが順調だっただけ、かもなぁ。空間の謎のレイヤーもオバケも、わかりやすかった。気付いてもらうための仕掛けだもんな。そりゃ、そうか」
「けど、榛葉先輩は隠している訳ではないって、言ったんですよね?」
「そう言ってたけどな。浅沼先輩なら見付けられる場所にあるって」
浅沼は受験生だから、土曜日だけ付き合ってもらった。
嘘とか誤魔化しではなく、浅沼は残り二枚のレイヤーの在処を本当に知らない様子だった。
「その浅沼先輩は、今日は塾でいませんが」
「だなぁ」
机に突っ伏す俺の隣で、圭吾はあくせくパソコンのフォルダを検索している。
真面目な奴だ。
「気分転換しようぜ。飲み物、買ってくるけど、何がいい?」
「じゃぁ、御言葉に甘えて、ミルクコーヒーお願いします」
「りょ。相変わらず甘いの好きなー」
財布とスマホだけ持って、俺は部室を出た。
自販機まで歩きながら、朝陽のシネマトグラフについて、改めて考えてみた。
「謎の背景レイヤー二枚、部室のオバケで三枚目。残り二枚、急にヒントが減ったな」
パソコンの中に、それらしいデータはない。
部屋の中に痕跡もない。
カメラも確認済みだ。
画像は加工してある可能性が高いから、カメラはそもそも望み薄だ。
「置いてある。朝陽さんは、浅沼先輩が気付きそうな場所に置いてあるって、言ってたよな」
あの言い回しが、ずっと引っ掛かっていた。
『隠したわけじゃない。気付いてほしい人が気付ける場所に置いてきただけだ』
言葉を脳内で反復して、俺は足を止めた。
「……置いて、あるのか。ただ置くだけなら、部室である必要はないんだ。というか、ソフトもプロジェクターも、いらねぇんじゃねぇの?」
ざわり、と胸が騒いだ。
もしかしたら俺たちは、見当違いな場所を探しているんじゃないのか?
答えは、もっと身近でシンプルなんじゃないのか?
可能性に気が付いて、俺は部室に駆け戻った。
「圭吾!」
名前を叫びながら、部室のドアを開けた。
「早かったですね。ミルクコーヒーは?」
「それどころじゃねぇ、探すぞ!」
「コーヒーを?」
「USBを!」
「ゆーえすびー?」
圭吾が首を傾げた。
俺は、パソコンが載っている机の引き出しを漁った。
「圭吾は学校用クラウドで写真部のフォルダを探せ。共有からアクセスできる学校のクラウドに、写真部用フォルダがあるだろ。鍵、掛かってても良いから」
気が付いた顔をした圭吾が、パソコンに向かった。
「そうか、オバケとか謎のレイヤーみたいに、視覚的に見付ける必要はないんですね」
理解が速くて、助かる。
「そう。最初の発見がそれだったから、同じ仕掛けだって思い込んでたけど。最初の三つは気付かせるために、あえて派手な仕掛けにしたんだ。残りは、加工済みの画像をUSBやクラウドに保存しておけば、普通に使える」
朝陽がこっそり準備した加工済み写真をどこかに置いたのなら、浅沼に心当たりがなくても頷ける。
最初の三枚を派手な仕掛けにして存在を知らせ、浅沼に気付かせる。
「ソフトもプロジェクターも連動させる必要がないなら、浅沼先輩しかアクセスできない場所においておけばいいんですね」
「クラウドは部長じゃないとロック解除できないフォルダがあるだろ。USBだって、部長だけが持ってるようなのが、一個くらい……」
俺は圭吾と目を合わせた。
「どっちにしても、浅沼先輩がいないと、開かないですね」
「だな。とりあえず、目星だけは付けるか」
各々、探した結果、それらしいものは見付けた。
「写真部用のクラウドフォルダは、鍵がかかってますね」
「俺が見付けたUSBも、ロックがかかってるな」
「A2フォルダも最初は、ロックがかかっていました。浅沼先輩が開けてくれなきゃ、俺は背景レイヤーを見付けられなかったから、可能性は高いですよ」
「だといいなぁ」
互いの成果を見せ合って、息を吐く。
「とりあえずは明日かぁ」
「とっかかりが見付かっただけでも、収穫ですよ。休憩しましょう。今度は俺が飲み物、買ってきます。遥先輩はブラックコーヒーですか?」
「イチゴミルクが良い。疲れたから甘いの飲みてぇ」
「……可愛い」
「なんて?」
「行ってきます」
ほどなくして戻ってきた圭吾は、イチゴミルクとブラックコーヒーを両方持っていた。
「要らなくなったら、イチゴミルク貰います。遥先輩、いつも二口くらいで飽きるから」
「子供じゃねぇんだから。ちゃんと全部、飲みますぅ」
パックのイチゴミルクをチュウチュウしながら、ぶぅたれる。
俺を揶揄う圭吾はミルクコーヒーを飲んでいる。
中学の頃から甘いものが好きで、よく餌付けされていた。
変わらないな、と少しだけ思う。

