あの夢を見たのは、これで九回目だった。
優司は今朝の夢を思い出していた。
「危ない!」
浩志の声に振り返った瞬間、ボールが顔にぶつかり引っくり返った。
「優司!」
「大丈夫か!?」
周りで飛び交っている声を聞きながら優司は意識を失った。
夢の中で優司は必死でボールを追い掛けていた。
だが不思議なことにそれはどう見ても卓球の玉なのにやけに大きい。
「クロ! 危ない!」
不意に、卓球の球を追い掛けるのに夢中になっている自分を呼ぶ声がした。
クロ……?
そう思った瞬間、辺りが暗くなって意識を失った。
「青井君!」
目を開けると担任の大西先生が覗き込んでいた。
心配そうな顔は少し青ざめている。
「大西……大西結花先生?」
優司が呟く。
大西結花。
「俺、猫だった」
「は……?」
「先生の……」
『飼い猫だった』と続けようとしたが、その前に、
「青井君、大丈夫!?」
真っ青になった大西に遮られた。
「優司!」
浩志も心配そうな顔をしている。。
「頭を打っているし、一応病院に行った方がいいわね」
保健室の先生がそう言った。
何度も大丈夫だと言ったのだが結局病院に連れていかれてしまった。
しかし、よく考えたら『先生に飼われていた』なんて言ったら妙な誤解を招いただろう。
そう。
ボールにぶつかって思い出したのだ。前世のことを。
自分は猫だったが死んで生まれ変わったのだ。
死因はよく分からない。
結花の叫び声を聞いた瞬間、意識を失った。というか、死んだのだろう――事故か何かで。
ここのところ毎晩見ていたのは猫だった頃の記憶だったのだ。
猫だった頃、動くものを追い掛けるのが好きで毎日走り回っていた。
結花が投げてくれたオモチャを追って、自分でオモチャを放り投げて。
オモチャを咥えて首を思い切り振りながら口を離すと勢いよく飛んでいくからそれを追い掛けていくのだ。
死ぬ直前のお気に入りは卓球の球だった。
フローリングの床の上を弾んで飛び回るからそれをひたすら追い回していたのだ。
そして追い掛けている最中に死んだ。
道理で球技が好きなはずだ。
正確にはボールを追い掛けるのが好きなのだ。
だから一番好きなのはサッカーだった。
野球や卓球も好きだが。
そうか、猫だった頃、好きだったからか……。
優司は今朝の夢を思い出していた。
「危ない!」
浩志の声に振り返った瞬間、ボールが顔にぶつかり引っくり返った。
「優司!」
「大丈夫か!?」
周りで飛び交っている声を聞きながら優司は意識を失った。
夢の中で優司は必死でボールを追い掛けていた。
だが不思議なことにそれはどう見ても卓球の玉なのにやけに大きい。
「クロ! 危ない!」
不意に、卓球の球を追い掛けるのに夢中になっている自分を呼ぶ声がした。
クロ……?
そう思った瞬間、辺りが暗くなって意識を失った。
「青井君!」
目を開けると担任の大西先生が覗き込んでいた。
心配そうな顔は少し青ざめている。
「大西……大西結花先生?」
優司が呟く。
大西結花。
「俺、猫だった」
「は……?」
「先生の……」
『飼い猫だった』と続けようとしたが、その前に、
「青井君、大丈夫!?」
真っ青になった大西に遮られた。
「優司!」
浩志も心配そうな顔をしている。。
「頭を打っているし、一応病院に行った方がいいわね」
保健室の先生がそう言った。
何度も大丈夫だと言ったのだが結局病院に連れていかれてしまった。
しかし、よく考えたら『先生に飼われていた』なんて言ったら妙な誤解を招いただろう。
そう。
ボールにぶつかって思い出したのだ。前世のことを。
自分は猫だったが死んで生まれ変わったのだ。
死因はよく分からない。
結花の叫び声を聞いた瞬間、意識を失った。というか、死んだのだろう――事故か何かで。
ここのところ毎晩見ていたのは猫だった頃の記憶だったのだ。
猫だった頃、動くものを追い掛けるのが好きで毎日走り回っていた。
結花が投げてくれたオモチャを追って、自分でオモチャを放り投げて。
オモチャを咥えて首を思い切り振りながら口を離すと勢いよく飛んでいくからそれを追い掛けていくのだ。
死ぬ直前のお気に入りは卓球の球だった。
フローリングの床の上を弾んで飛び回るからそれをひたすら追い回していたのだ。
そして追い掛けている最中に死んだ。
道理で球技が好きなはずだ。
正確にはボールを追い掛けるのが好きなのだ。
だから一番好きなのはサッカーだった。
野球や卓球も好きだが。
そうか、猫だった頃、好きだったからか……。



