寒い日に、手袋を買った。
 彼の手が冷たそうだったから。
 その夜、渡そうとした瞬間――
「これ、君に」
 彼も同じ袋を差し出した。
 中身はまったく同じ色の手袋。笑い合って、そのまま片方ずつ交換した。
 あれから何年経っても、冬になるたびに思う。
 あの手の温もりが、私たちの始まりだった。