「もうあったまった?」

 彼女にそう訊かれて、僕は首を小さく横に振った。
 ︎本当はもう寒くなんてない。ただ、君の手にもう少しだけ触れていたかっただけだ。
 見上げた月が、ふたりの吐息を真似して白く揺れていて。そっと、その横顔を瞳の奥に映した。