おまけ
夜、ガシャバの部屋には誰もいない。
静寂の中で、彼はベルトを外すこともなく椅子に座り続けている。
身体は欲を覚えても、心はそれを命令のように鎮める。
「欲望は秩序の敵だ」
そう言い聞かせて、呼吸を整える。

彼にとって“性”は感情の延長であり、感情は罪だった。
愛も憎しみも、秩序を乱す。
だから彼は誰にも触れず、誰からも触れられない。
それでも時折、遠い記憶の中に残る“ぬくもり”が胸を刺す。
誰の手だったか、もう思い出せない。

彼の冷徹さは、生まれつきではなく、失う痛みを二度と味わわないための鎧。
その鎧の内側で、まだ人間としての火が小さく燻っている。