おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「あ、セシリア、アレシーナいた!」

 剣聖じいさんとの御前試合から数日後、俺たちは学園食堂でいつもと変わらず昼飯を食っていた。
 やっぱ日常っていいな。心が安らぐぜ。

 そんな俺たちのところへ、聖女マルナが小走りでやって来た。
 一枚の紙を取り出しそれを広げるとセシリアとアレシーナに見せ、楽しそうに話し込みはじめる。

 「ボクレンさん、どうですかこれ?」

 なにやら服のデザインが書き込まれた紙を見せるセシリア。

 こ、これは……


 「め、メイド服やないか!!」


 しかもかなりきわどいぞ……
 胸まわりとか、太もも付近とか。

 どうやら学園祭にてセシリアのクラスは、メイド喫茶なるものをするらしい。
 いま、王都で大人気なんですよ♪ と天使のごとく微笑むセシリア。

 「わたし実家が服屋さんなんです! みんなの服を作れるなんて、すっごく嬉しいです!」

 フンスと鼻息を立てて、かわいい力こぶを見せつけるマルナ。
 そういえばアレシーナがマルナになんか頼んでたみたいだったが、メイド服の件だったのか。

 「マルナ、淑女がそんな腕まくりなんてはしたないですわよ。さあ、打ち合わせの続きですわ」
 「は、はい。アレシーナ。じゃあカチューシャはこれがいいかな」

 いつもの会話かと思われるが、ちょっと違う。
 以前のようなピリピリした感じが2人の間にはない。

 アレシーナは最近いい意味で丸くなった気がする。
 大人しくなったというわけじゃない。心に少しばかり余裕ができた感じだ。だからマルナも自然体でアレシーナに接しているのだろう。
 学校てのは、いろんな人間が集まるからな。彼女もコミュニケーション力を変えようと努力しているのかもしれんな。

 そんな聖女たちを温かい目で見ていたら、「聖女をキモイ目でみるな」とうしろから声がした。
 リンナか、それにエリクラス隊長もいる。

 「お、珍しいな。学食にくるとは」
 「ああ、たまには来ないとな。それに貴様のような変態の監視も必要だ」

 おっさんは天使たちを見守っていただけだぞ。

 「まあ、学園祭の準備ですか」
 「はい、エリクラス隊長。メイド喫茶やるんです♪」
 「ふふ、楽しそうですね。リンナも着させてもらったらどうですか?」

 「な、なにを言うんですか隊長! あたしはこんなかわいい服……に、似合いませんから!」

 真っ赤になって抗議するリンナ。
 でも……確かに見てみたい気はする。

 「な、なんだ貴様ぁ……エロい目で想像するな!」

 「ふふ、相変わらず仲がいいこと」

 いや、おっさんは普通に絡まれてるだけなんだが。

 「あ、そうでした。アレシーナさん。聖女魔法演舞の申し込み、たしかに受領しましたよ」
 「はい、感謝しますわ」

 セイジョマホウエンブ?? なんじゃいそれ?

 「学園祭恒例の名物のイベントだ。希望者がステージで聖魔法を繰り広げる、魔法披露会みたいなものだ」

 頭に?が浮かんでいたおっさんに、リンナが教えてくれた。
 ほうほう、それにアレシーナが出場すると。

 「にしても1年生で出場なんて、凄いわ」
 「そうなのか、隊長?」
 「ええ、ボクレン。普通は3年生がメインで少しばかり2年生が混ざるけど、1年生はほとんど出ませんから」

 魔法演舞というイベント、ステージ上で日頃の訓練成果を見せるのが主目的らしいのだが、魔法の精度はもちろんのこと、詠唱や立ち振る舞いなど色々な審査をへて、優勝者が決まるとのこと。

 「そうか、とにかく楽しめよ。アレシーナ」
 「もちろんですわ……ですが、出場する以上は一番を取りますわ」

 一番、つまり優勝ってことか。
 そっか、そうだよな。それでこそアレシーナだ。

 「アレシーナはなにをするの? 【結界】、【治癒】? それとも【浄化】かな?」

 セシリアが会話に食いついてきた。
 アレシーナはどの魔法も卒なくこなせるが。どれにするんだろな。

 「もちろん――――――全部ですわ」

 「え……全部って。もしかして……」

 「ええ、3つ同時発動ですわ!」

 なにそれ、そんなことができるのか。すげぇ……。

 「でもアレシーナって2つ同時はできたけど、3つって見たことないけど……」
 「ええ、学園祭までに間に合わせますわ。それに教会関係者の方も多くいらっしゃいますし、無様なことはできませんの」

 固い決意の瞳を揺らすアレアシーナ。
 なるほど、これも彼女の目標に近づくための一歩というわけか。
 本当に頑張る子だ。

 「ふふ、気合の入った1年生も参加するこですし、今年の聖女魔法演舞は盛り上がりそうですねリンナ」
 「アレシーナ、あたしも応援しているからな。優勝して綺麗な花火を見せてくれ」

 「花火? それって、空に打ちあがるあれか?」

 「ええ、そうですよボクレン。優勝者には花火の元が与えれます。自らの魔力で王都の夜空に花を咲かすことができるんです」

 「わぁ~~それって王都名物にもなってますよね」
 「そうだな、聖女マルナ。優勝者の上げる花火は王都名物でもある……だが」

 リンナが少し言葉を濁す。

 「実は、花火の元である焔玉果(レインボーフレアフルーツ)が今年は入手できてないの」

 エリクラスが言うには、毎年あげる花火の元はその焔玉果(レインボーフレアフルーツ)と決っているそうだ。それは、虹色の綺麗な花を咲かせる唯一無二の一品らしい。

 「ですが、こればっかりは人の手では作れません。今年は市販の魔法花火を購入するしかなさそうですね」

 う~~ん、優勝したのにそれじゃ今年の子がかわいそうだ。それにアレシーナには綺麗に輝いて欲しいしな。

 虹色の花火ねぇ…………あ!!

 「なあ、それって実っていうからには、木になってるんだよな」
 「ええ、そうですよボクレン。虹の大木という木になる実なのですが、業者さんのお話ですと近隣にある大木からは実ができていないというお話です。そもそも、その大木じたいが希少なものですし」

 ふむふむ、虹色の火花を散らす実。

 「見たことがある……というか実のある場所を知ってるぞ」

 「なにぃ、本当かボクレン! 焔玉果(レインボーフレアフルーツ)は入手困難度SSクラスだぞ!?」
 「リンナの言うとおりです。専門のS級冒険者でないと入手困難な希少品ですから」

 「いや、俺が知っている場所は、まだ誰にも知られていないんだと思う。だがそこならけっこうな数があるはずだ」

 「え……ボクレンさん、まさかその場所って」


 「ああ、俺の住んでいた森だ」


 そう、ちょくちょく見かけてたやつだ。あれに違いないだろう。

 「くっ……魔の森か……」

 「ってことで、ちょっくら取りに行ってくるわ。リンナ、すまんがその間2人の護衛を頼む」

 「な、なぁ! 簡単に言うな貴様ぁ! 魔の森なんだぞ!」

 いや、おっさんの住んでた場所だし。
 里帰りみたいなもんだろ。

 「わたしも行きますよ!」
 「ワタクシもですわ!」

 聖女二人が声をあげる。

 「2人は授業があるだろ」

 「3週先まで予習してあるから、なんとかなります!」
 「ワタクシも実戦を積みたいですわ!」

 やだ、超優秀で前向きだわ。この子たち。

 「話はぁ~~聞かせてもらいましたよ~~」

 割って入ったこの間伸びした声は、マシーカ先生か。

 「二人なら~~あとで補習するから大丈夫ですよ~それよりもぉ~学園名物をよろしくたのみますよ~」

 ということで、俺の里帰りが急遽決定した。

 いやぁ~~久しぶりだなぁ。

 善は急げってことで、早速準備にかかろうと席をたつと、エリクラス隊長がある人物を呼び止めた。

 「レイニ、ちょうどいいところにいましたね」
 「あ、隊長! どうしたんですか?」

 今から食事らしく、トレーを手にもつレイニ。

 「あなたもボクレンについて行きなさい」
 「え? ボクレンさんと……ですか?」
 「はい、聖女セシリアとアレシーナも一緒です」
 「ああ、てことはどこかのお店ですかぁ~買物かなぁ」

 「違います。あなたはボクレンたちと森に行ってもらいます」

 「へぇ……森って……」

 「そうですよ。野営もあるでしょうし、女性聖騎士も1人はついていたほうが良いでしょうから」

 「えと……ちなみに森の名前は……」

 「魔の森です」

 「あ、もしかして。そ、そういう名前のテーマパークですか。そうですよね、隊長、ね!」

 「いいえ、辺境にある魔の森ですよ」


 「……やだぁああああ!!」


 持ってたトレイをガシャーンと盛大に落とすレイニ。
 どうしたんだ急に? ただの森だぞ。

 「あ、虫が嫌いなのか? 虫よけの薬草塗ってやる」

 「ちがうぅうう、虫程度ならいくらでもいいんですぅうう!」

 いや、そんな泣き叫ばれても。
 相変わらずこの子のテンション、よくわからんわ。



 ◇◇◇



 そして、数日後。
 魔の森に入った俺たち。

 「いやぁ~~懐かしいなぁ。やっぱ森は落ち着く」

 俺の後ろに、セシリアとアレシーナ、そしてしんがりにレイニの順で森を突き進む。

 「ふぇえ……なんでこんなことにぃい……」

 思い出したかのようにべそをかくレイニ。
 そんなに虫が嫌なのか?

 「この森は勝手知ったる場所だし、比較的安全だぞ」

 「ボクレンさんの言う事は、一切信用できません……」

 なにをビビってるんだ。

 「レイニの実力なら余裕だぞ、こんな森」
 「ほ、本当ですかぁ……」
 「ああ、今までのレイニを見て、俺がそう思うんだから間違いないぞ」
 「そ、そっか。私も強くなってるのかも……うんうん、できる。私はできる」

 うむ、どうやら落ち着いたようだな。

 そこへ茂みを揺らして現れる魔物。

 「お、ゴブリンだ。ちょっと行ってくる」

 ささっと木刀を振ると、目の前のゴブリンたちがバタバタと倒れていく。
 全部で5体。ほら見ろ、こんなの余裕だろ。

 「な、安心しろ。この森なんてザコばっかり―――」


 「「だからそれ――――――ゴブリンキングです!」わ!」

 「うわぁ~~ん、やっぱり来るんじゃなかったぁあああ!」


 聖女2人が叫び、なぜかレイニが泣き出した。


 あ! レイニのやつ、虫じゃなくてゴブリンが苦手だったのか。