おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「いやいやいやティナ、それはどうかと思うぞ」

 なに言ってんのこの子。
 王女とおっさんとか、100パーダメだろ。

 「なにがおかしいんですかぁ? 他に選択肢なんてないと思います♪」

 あるだろ!
 
 山のように!

 おっさん一択とか、意味がわからん!

 「ティナよ。そこまでボクレンが気に入ったのか」
 「はい、お父様! ボクレン様しかいません!」
 「ほう、王女の聖騎士になるのだ。ゆくゆくは王家に迎え入れたいということかのう」
 「まあ、お父様ったら。気が早いですわ。お互いをもっと深く知って……やだっ♡ わたしたらなに言ってるの」

 やだっ♡……じゃねぇよ。

 マジでこの人たちは何を言ってるの?
 もしかして、うわさのロイヤルジョークというやつではないのか。
 そんなうわさ知らんけど。

 「なるほど、試合の褒美としてはティナでもいいかものう」

 よくねぇ!
 ちゃんと考えてくれ。おっさんだぞ!!

 そもそも俺はじいさんと試合しただけじゃないか。
 じいさまは強かったが、まあ世間にあんな猛者はいっぱいいるだろ。

 この人たちはおっさんを過剰に持ち上げすぎなんだよ……

 「「まってください」ですわ!」

 そこへセシリアとアレシーナがまったをかける。
 おお、俺の天使たち。おっさんを助けてくるのか。

 「それは良くないですわ。この男、わたくしのスカートをめくってパンツ見ましたの。姫殿下のご想像するような紳士とはほど遠いですわ」

 あれ? これは……

 「そ、そうです。聖女像のスカートも壊して見るぐらいのパンツ狂なんです。姫もパンツ被られますよ! 頭に!」

 被らねぇよ!

 「あたしのスカートもめくってたな」
 「あらら、それはわたくしもですね」

 「なにぃいい! わしの可愛い孫娘のパンツをかぁあ!!」

 リンナにエリクラスまで。
 あと、ガスティークの剣聖じいさまが凄まじい顔してる。試合より闘気が高まってるぞ。

 ああ、なんかみんな怖い……
 めくれたかもしれんけど、全部事故なんだよぉ。


 「「「「「ということで、ボクレンは変態です」」」」」


 息ピッタリかよ……。


 「フォフォ、どうやら学園はこやつを手放したくないようじゃぞ」

 ティナに視線を向ける王様。
 そんな彼女が口をへの字に曲げる。

 「むぅうう……でも、セシリアさんもアレシーナさんも、ボクレン様が選んだわけじゃないですよね?」

 「ああ、そうだ」

 「じゃあ、ボクレン様はお二人にこだわる必要ないじゃないですか!」

 ふぅ……なるほど。

 「だってティナの方が可愛いし、【結界】も上手だって言われてるし。ボクレン様に相応しいのはティナだもん!」

 うん、可愛いのは事実。甘やかしたくなる気持ちもわかる。
 ……が、お姫さまだからって、それで押し切られていい話じゃねえ。

 「ティナ、セシリアは出会った頃はほとんど魔法が使えなかった」

 「えっと……ボクレン様?」

 「少しだけ俺の話を聞いてくれ」

 少し不服そうだが、コクリと頷くティナ。

 「でも今では、【治癒】に【結界】そして【浄化】まで使えるようになった」

 セシリアに視線を向けた。

 「それは彼女が目標をもって頑張ったからだ。セシリアの目標は可能な限りの瘴気を【浄化】すること。その想いが今までの頑張りに繋がっている」

 そして俺はもう一人の聖女、アレシーナに目を向ける。

 「アレシーナは、元より魔法も勉強も優秀だ。だが、彼女の目標はとてつもなく高い。それに家庭の事情も複雑だ。だが彼女は怯まず前を向いて、ひたむきに頑張っている」

 二人の聖女が口を開く。

 「はい、1人でも多くの方が魔物の被害にあわずに済むように。そんなみんなの笑顔を作れる聖女になりたいです」
 「目標は教会総庁へ入り、聖女運営に携わりたいですわ。いえ……必ず成し遂げますわ」

 俺は再びティナと向き合った。

 「な、すげぇだろ2人とも。そんな彼女たちが選んでくれたんだぜ。一時の感情や勢いだけで、俺を聖騎士に選んだわけじゃないんだ」

 2人は真剣に言った―――俺じゃないとダメだと。
 そんな2人だからこそ、俺は引き受けたんだ。

 おっと、なんだか説教じみちまった。
 けど、わかってくれたかな。

 ティナは俯いており、その表情はわからない。

 そこへ別の声がその場に響いた。

 「ふむ、アレシーナにセシリアよ。良くぞ申した。さすがは我が国の聖女たちじゃ」

 王様の言葉に、まわりも賛同の声をあげる。

 「そなたらの気持ちを考えず、口走ってもうたの。許せボクレン、そして2人の聖女よ」

 「そ、そんなお父様! ティナが悪いんです。ごめんなさいです!」

 お、素直に謝れる子じゃないか。

 「ふむ、ティナよ。聖騎士については、来年入学してから決めれば良かろう」

 そうそう、王様の言う通りだ。色んなやつがいるんだから、おっさん一択なんて意味不明なことしなくていいんだ。まあ、ティナも頭のいい子そうだしな。
 わかってくれるだろう。

 「はいっ、お父様! ティナは心を入れ替えて、第三夫人を目指します!」

 俺に向かってにこやかにVサインをかます王女様。

 ダメだ……わかってなかった。


 「ときにエリクラスよ。学園といえば、そろそろあの時期ではないかのう」
 「はい、陛下。学園祭ですね」

 学園祭? ああ、前にスケジュールで見たっけか。

 「おう、そうじゃそうじゃ」
 「わぁ~~学園祭楽しみですぅ~~♪」

 はて、なんでティナが楽しみなんだ?

 「あれ? ボクレン様、知らないんですか? 来年入学予定者は学園祭に参加できるんですよ」

 うん、知らん。

 そして凄く嫌な予感がしてきた。

 「な、なあ……ティナも参加するのかな? でもさすがに王女さまだから忙しいだろ。無理はいけないぞ」

 「全然予定あいてますよ~~エスコートはもちろんボクレン様で♪」

 ほらぁ……こんなこと言い出すやん。
 王族の護衛がいるだろ。

 「ふむ、ボクレンよ。ひとつ頼まれてはくれんかのう。もちろんティナの聖騎士の件とは別じゃ」

 「いやいや、おっさんだぞ」

 「貴殿であれば問題あるまい」

 そこへガスティークのじいさまがかぶせてくる。

 「ええぇ……」

 「宝剣を折ったやつがなにを臆しておる」

 はい?

 「ホウケン折れた……??」

 「そうじゃ、陛下より賜りし宝剣レガリアス。至高の一刀じゃ」

 ヤバいぃい……超高そうな名前でてきた。
 いや、もはや値段うんぬんのレベルではないかも。

 「マジすか……あ、実はもう年代物で使い込まれすぎてたとか」
 「いや、お主との試合直前まではピンピンしとったぞ」

 うわぁ、元気だったんだ……。
 どうしよう……なんかこんなことが前にもあったような。

 俺は恐る恐る王様に視線を向ける。

 「ほう、あれを折ったのか。あれは王家の秘宝じゃったんだがのぅ~~」

 ニヤニヤしとる。

 はいはい、やりゃい~~んでしょ。

 「わかった。学園祭当日、ティナの護衛は俺がやるよ」

 やた~~と満面の笑みで両手をブンブン振る王女殿下さま。
 これだけだと、超絶にかわいいんだが。

 セシリアとアレシーナもやれやれと言った顔をしている。
 まったく、面倒ごとが起こりそうな予感しかせん。

 その後も豪勢な料理と酒に苦戦しつつも楽しんだおっさん。
 こうして晩餐会はなんとか無事、乗り切ることが出来そうだ。

 「してエリクラスよ……例の事件、背景をさぐっておるが、やはり魔導国がキナ臭くてのう」

 「はい、陛下。学園長が学園の【結界】を強化するとおっしゃってました」
 「ふむ、まあ彼女の【結界】ならば安心とは思うが、用心にこしたことはないぞ」

 「はい、陛下。警戒を怠りません。とくに学園祭は万全の警備をひきます」

 にしても魔導国って、あのレクラとかいう元聖女と関りがありそうなやつらか。
 細かい事はわからんが、何があってもセシリアとアレシーナはおっさん聖騎士が全力で守るさ。

 「フォフォ、左様か。まあボクレンがいるから、安心じゃがなぁ」

 王様がニンマリと俺を見た。


 ……これ本当に乗り切れたのか?



 ◇◇◇



 ◇長官視点◇

 魔導国家エーテルギアのとある場所。

 「魔導圧縮炉、安定稼働。出力八〇パーセント、全系統良好!」
 「魔力循環管路、聖属性魔力出力正常。魔力漏れ反応なし!」
 「土属性フィールド展開準備完了! 耐圧限界、深度五十までは安全域!」
 「音響設備、感度良好。魔導ソナー異常なし!」

 艦内は淡い魔光灯の明かりに包まれ、計器類が小さく脈打つように光っている。
 各員の手が次々と魔力刻印パネルに触れ、緑色のランプがひとつ、またひとつと点灯していく。

 「長官!――――――全システムチェック完了! いつでもいけます!」

 俺はゆっくりと艦内マイクを手に取り―――

 『総員よく聞け! 本艦の目的地は隣国ルハルト王国! やつらは聖女を独占して私腹を肥やしている豚どもだ!』
 
 我ら魔導国家は魔法に秀でたものが少ない……が、その分魔道具作りが盛んになった。
 魔道具は魔法のように使用者を限定しない。扱いがわかれば、誰でも使用できる。

 『ついに我らが魔導技術の集大成が完成した! 本艦である!』

 ククク……ついに魔導潜水艦の開発に成功した。
 大地を潜り、音もなく敵地へ侵入できる究極の兵器。
 こいつを量産することができれば、宿敵ルハルト王国を屈服させることができる!

 量産自体は時間をかければ何とかなるだろう。
 が、ひとつだけ問題がある。

 魔導エンジンの動力源である燃料。
 これは聖属性魔力でしか稼働しない。純度の高い魔力がどうしても必要なのだ。この問題だけは、どうしても解決ができなかった。

 『いよいよ我ら魔導国が日の目を見る時である! 我らはその先駆けとなったのだ!!』

 艦内に俺の声が力強く響く。

 少し前に拾った豚、ブロスだったか。
 あのクスリ漬けにされた聖騎士は、ろくな情報を持っていなかった。
 その後廃棄処分されたが……

 だが、ひとつだけいいネタを持っていたな。

 俺は深く息を吸い込み、命じた。


 『魔導潜水艦G201(グラウンドクラーケン)――――――出撃!
 ――――――目標、ルハルト王国聖女学園!! 潜航開始っ!!』


 次の瞬間、艦は大地の中へと音もなく溶け込み、暗き地中を滑るように進み始めた。

 クハハハ…学園祭か、こいつはいい。燃料の元が取り放題だぞ。