おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「ホンジツハ、オマネキイタダキ、キョウシュクキワミノアザース、デアリマス」

 「なんじゃボクレン。意味不明なこと言っとらんで座らんか」

 王様のツッコミにより、俺は席につく。
 せっかく晩餐会の直前にアレシーナが特訓してくれた挨拶だったが、秒で撃沈した。

 全然できんかった。

 隣に座るアレシーナに「すまん」と呟くと。「それもまたボクレンらしさですわ」と優しい呟きが返って来た。

 めっちゃええ子や。

 そして、ついに始まってしまった。晩餐会という名の拷問タイム。
 俺の隣はアレシーナ、さらにその隣にセシリア、エリクラス隊長、リンナ副隊長と続く。
 テーブルを挟んで向かいは、王様に王子さまと剣聖じいさん、あと何人か知らんおっさん。たぶんお偉方貴族さまだろう。

 つまり俺側が学園関係者、むかいが王族・お偉方ご一行。

 ……のはずだったのに。

 「まあまあ~ボクレン様、たくさん食べて楽しみましょうね♪」

 緑の髪をふわりと揺らせて、にこやかに笑う美少女。

 なぜ王女がこっち側にいるんですか……。

 俺のもう一方の隣には、第三王女のティナが座っていた。
 会場入りした瞬間、強引に座っちゃったのだ。

 誰か止めろよ。自由すぎるぞこの子。

 にしてもなんでおっさんの横に来たがる?
 試合後に風呂も入っとらんぞ。おっさん臭、間違いなく出てるぞ。
 いいのかよぉ……

 「ティナ王女殿下、やはりお席を移られた方がいいのではないでしょうか?」
 「王女殿下というお立場から考えても、その方がよろしいですわ」

 「あら、なぜです? 本日の主役ボクレン様の横で、た~~っぷりサービス差し上げる。それのなにがいけないのかしら」

 ティナの言葉にセシリアとアレシーナが「むぅうう」と唸る。
 またバチバチしはじめた……

 まったく。しゃーないな。

 「こら、3人ともやめるんだ。今から飯なんだから。そんな気分で食ったら美味いもんもマズくなるぞ」

 「はぁ~~い。ボクレン様、ごめんなさい。セシリアさん、アレシーナさんも仲良くしましょうね」
 「え、ええ……わかりました」
 「もちろん、ワタクシは元より王女殿下に忠誠を誓う身。異論などあろうはずがないですわ」

 「よしよし、歳も近いんだし。飯は仲良く食った方が美味いからな」

 ふぅ、これで良しと。

 ちょいちょいと俺の袖を引っ張るアレシーナが小さく呟いた。

 「ボクレン、素に戻ってますわよ」

 んん?

 ああっ! やべぇ!

 おっさん、いつも通りやん!
 王女たしなめて、飯が美味いのどうのと講釈垂れて……

 エリクラス隊長は下を向き……リンナはすげぇ顔で睨んでる。
 テーブル向かいのお偉方貴族さんたちも、全員青くなってらっしゃるではないか。

 俺が誰よりも青くなりはじめていると、王様がフォフォフォと笑った。

 「よい、試合も非公開じゃった。この場も無礼講じゃ。ボクレン、お主の好きなように話すがよい」

 おおぉ……なんかおっさん許されたっぽいぞ。

 「良かったですねボクレン様。あ、私のことは引き続き「ティナ」とお呼びくださいね」

 悪戯心を含んだように微笑む第三王女。
 この子が登場してから、おっさん心が休まる暇ないんだが……まあ、今日一時の事だしなんとか乗り切ろう。
 さっさと飯食って帰るんだ。

 その後は思ったよりも静かに進む晩餐会。

 あれ? そんなにビビるほどでも無かったかな。

 次々と出てくる料理は、豪華なうえに上品さをあわせもった品ばかり。
 エールは出なかったが、ワインが超絶に美味い。
 間違いなく、今日しか食べることはなさそうなやつだ。

 左右にズラッと並んだ食器に面食らったが、隣のアレシーナが新しい皿が出るたびにどの食器を使用するか教えてくれた。

 さすがのおっさんも、ナイフとフォークの使い方ぐらいはわかるぜ。
 などと調子に乗っていたのだが……

 「うおっ、なんだこれ?」

 金ぴかの皿に、得体の知れん食い物がのってやがる。
 刻まれた具材を丸いパンみたいな皮が覆っている。上に変なソース、おっさんの手には細いフォーク。

 ……これ、どうやって食うんだ?

 「ボクレン、これはこうやって……ほら、真ん中をフォークで軽く押すとソースが染み込みますの」

 すると隣のアレシーナが実戦してみせてくれた。

 「お、おう……こうか?」

 ぐしゃっ。

 うおっ、ムズイ!

 「……もう少し、力を抜いて」

 アレシーナがくすりと笑いながら、手をそっと添えてくる。
 白い指が優雅に動き、まるで舞を見てるみてぇだ。

 なんだこれ……食べ方教わってるだけなのに、ドキドキするぞ。

 あと隣から「むうぅ……」って声が聞こえるけど、知らんぷりしよう。
 だってこれはおっさん悪くない。こんな料理は黒豚亭にもないし。絶対庶民料理じゃないからな。

 アレシーナのあいの手で、なんとか良く分からん料理を口にしたおっさん。

 うまぁああ……

 なんこれ。これ作った人、天才だな。

 「フォフォ、気にいったようでなによりじゃな」

 俺の緩みまくった顔面を見てか、王様が満足げに笑った。
 そんな王様が話を続ける。

 「どうじゃボクレン。聖女学園は楽しいか?」

 「ああ……最高の職場だ……です」

 おっと、さすがに無礼講と言えども気をつけんと。

 「フォフォ、そうかそうか。では当面は辞める気もないと」
 「そうだな。俺はこの職場に就くことで運を使い果たした。だから転職する気はないよ……です」

 「できもせん言葉遣いはいらん。ということは来年も学園におるのだな?」
 「ああ、そのつもりだ」

 本当に俺は運がいい。
 この職場は天国みたいなもんだ。

 俺の聖女は2人とも天使だし。
 聖騎士や他の聖女たちも、美人美少女だ。
 しかも木刀振ってるだけで給料出るし。時にはボーナスまで出るんだぞ。

 「これで文句言ったら、バチが当たるよ」

 「ふむふむ、そうかそうか。時にボクレンよ。我が王族にも聖女が誕生してな」

 はい? 

 「つい半年前に聖属性魔力が発現したのじゃ」

 あ……なんか嫌な予感がしてきた。

 俺の横で袖をクイクイ引っ張る美少女。
 アレシーナではない。

 としたら……もうこの子しかいない。

 「じゃ~~ん、わたしで~~す♪」

 エメラルドグリーンの髪をふわりと揺らせながら、自分の小顔にダブル人差し指を向ける美少女。

 ……そうなんだ。

 「まあまあ、ボクレン様ったら。そんなに嬉しいんですか? 聖女ですよ、ティナは聖女のたまごなんですよぉ~~♪」

 「あ、アレシーナ……」
 「ボクレン、ワタクシたちも観覧席で知りましたの。間違いなくティナ王女殿下は聖属性魔力を持っていますわ」

 間違いないのか……。

 「ボクレン様ぁ~観覧席を囲っていた【結界】、わたしが張りましたぁ!」

 そうかあの【結界】はティナが張ったんだ……。

 「フォフォ、ティナには【結界】に才があるようでな」

 まあ確かに、学園に入ってもいないのにすでに使えるとか凄いな。

 「いままでティナの【結界】を破った者は城内にはおらんかったのじゃ」

 ええ……それは流石にないんじゃないか。
 だって王城だぞ。それなりに凄い奴らはいるだろう。

 「はいっ! ティナは凄いんです! って調子乗ってたけど……井の中の蛙でした!
 だって、ティナの【結界】、初めてボロボロになっちゃいましたから♪」

 ああぁ、思い出した。
 そういやボロボロになってたな……【結界】。

 「ティナは、ボクレン様に初めてを奪われたんです♡」

 言い方ぁああ! 
 おっさん奪ってねぇから! あとセシリアとアレシーナの顔が怖い。

 「待ってくれ。別に俺ってわけじゃ……どっちかっていうと剣聖のじいさまが……」

 「いいえ、ボクレン様の「ぬんっ!」で壊れましたよ♪」

 ダメだ、おっさんのいう事まったく聞いてくれない。この子。

 「こんなの初めてなんです……」

 ティナの瞳が♡に変わっているような。

 「ティナは来年、聖女学園に入ります。だから……」

 だからなんだ?
 嫌な予感がマックスだが、外れてくれ。


 「来年入学した際には――――――ボクレン様を聖騎士にしま~~す♪」


 しま~す♪ じゃないんだよ。