おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 ―――ズバァンッ!!

 じいさまの斬撃が、稲妻のように空間を裂いた。

 剣聖の一太刀。
 その一撃をおっさんの木刀が、真正面から受け止める。

 「ぬんんんっ!!」
 「ふんぬぅううう!!」

 じいさまの剣とおっさんの木刀が交差した瞬間―――
 爆風のような衝撃が闘技場を包んだ。

 「な、なんだ今の音……魔法か!?」
 「いいや……違う……! 剣と木刀が、ぶつかっただけだ……!」

 王族護衛の兵士たちから、唖然と声を漏らす。

 すげぇ……。

 打ち込むたび、受けるたびに、俺の相棒である木刀がビリビリ震える。

 この感覚だよ。

 オヤジと幾度となく打ち合った時と同じだ。

 「――――――ぬんんんっ!」

 いい振りができてる……

 こりゃたまらん!

 「――――――ふんぬぅうう!」

 じいさまも負けじと気張る。

 その気迫で闘技場が揺れる!

 じいさまの斬撃、最高じゃねぇか!!

 「ふん、わしの一撃がそんなに嬉しいのか。まったく期待通りのやつじゃわい」

 ははっ―――
 どうやら笑みがこぼれていたらしい。


 「父上……これは……人の戦いなのか……」

 「ぬぅ……凄まじい。久しぶりに見るが、さすが元剣聖。じゃが……。
 あのおっさんはなんじゃ……こんな男が名も上げずに埋もれていたとは、信じられぬわ」

 「凄いですわ……あの木刀おじさま……!」

 おいおい、王様をはじめ王子、王女まで立ち上がっているじゃないか。
 試合に集中しているので、会話は良く聞こえんが。
 王族ご一行も少しは楽しんでくれているってことか。

 闘技場の地面が、軋み、震え、砕け始めていた。
 空気が熱を帯び斬撃のたびに風が爆ぜる。

 俺は木刀を振りまくる。

 じいさまの斬撃が、振るうたび威力を増していく。

 うける木刀にじいさまの気迫が響く。
 のってきたのか。

 引退してから長いのだろう。
 早々かつての感覚は取り戻せないはず。

 にもかかわらず……

 マジですげぇえ……このじいさん、もう歳のはずなのに。

 やはり世の中には凄い奴が山のようにいやがる。

 さらに斬撃が鋭さを重さを増していく。
 こんな手応え、オヤジとの鍛錬以来だぞ。

 「ボクレン、おぬし……【加護】は使わんのか?」

 「んん? 【加護】って……ああ。だったら、もう貰ってるぜ」

 俺は、くいっと観客席を指さす。

 そこにいるのは―――
 満面の笑みで手を振る聖女セシリア。
 自信の立ち姿で赤い縦ロールを揺らす聖女アレシーナ。

 「セシリアは、素直で頑張り屋さんの加護。アレシーナは力強く気高い決意の加護。
 ……どっちも、俺にとっちゃ最高の力なんだよ」


 「――――――ぬんんんっ!」


 俺の一振りで、じいさまの剣がうしろに弾かれた。

 うっし! おっさんもエンジンかかってきた!

 んじゃま……

 「どんどんいくぞ~~~!!
 ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ! ぬんっ!!」

 「……ぬぅ」

 俺の打ち込みに、防戦にまわりだしたじいさま。
 だが、すべてを確実に受け止めていく。

 「じいさまなのにすげぇ動きだ」

 動きに無駄が全く無い。
 こんな高齢で、どういう身体なんだよ。

 そうなじいさまガスティークが、俺の木刀を受け際にふふっと声を漏らした。

 「……長年生きてきたが、そんな【加護】があるとはのう」

 いやいや、何言ってんだ。
 これ以上の【加護】なんかないだろ。
 美少女2人から全力応援されてんだぞ。これで奮い立たなければバチが当たるぞ。

 純白の制服を揺らして、俺を見つめる2人の美少女。

 いや、もう最高以外のなにものでもない。

 ―――よっしゃ! バンバンいくぞ!

 俺は木刀を振りまくった。


 「ぐっ……斬撃が……さらに重くなっておる……!
 なんというデタラメな男じゃ、ボクレン……!!」

 じいさまが一歩、引いた。
 だが、その目は死んでいない。むしろ鋭く光っている。

 「やれやれ……この力は二度と使わぬつもりだったのじゃがな……。
 ――――――やむを得ん!」

 元剣聖じいさまが、再び構えを取る。


 「聖女よ、我が声に応えよ。
 その祈り、清き刃に祝福の火を灯せ。

 ―――――――――剣魂解放(ブレイドブースト)!!」


 じいさまの剣が唸る。
 大気が裂けるような爆音が轟くとともに、闘技場全体が真っ白な光に包まれた。


 「えええ!? こ、これ【加護】を……複数発動してます!?」
 「な、なんですの! こんなの聞いたことありませんわ!!」

 「これは、ガスティークの【二重加護】じゃ。まさかここで見ることになるはのう……」
 「わたしも実際に見るのは初めてですね。おじいさまがここまで本気を……!」

 観客席から騒がしく声があがる。

 そうか……じいさまいい年こいてるくせに無理してくれたんか。

 闘技場を包んだ白い光が、一点に集約されていく。
 その先は―――

 じいさまの剣。

 「その剣……すげぇ気合だな」

 交えてもいないのに、剣の闘志がビシビシと伝わってくる。

 「わかるかボクレンよ。これは、わしの2つ目の【加護】剣魂解放(ブレイドブースト)じゃ。
 一定時間、己の剣の力を極限まであげることができる」

 まわりの光りが集まるにつれて、じいさまの剣にグングン力が宿っていく。

 最後の一撃を出す気だな。

 2つの【加護】か。

 ならば俺は……

 「―――セシリア! アレシーナ!」

 「はいっ、ボクレンさんなら大丈夫ですよ! 信じてます!」
 「さっさと木刀振って終わらせなさい。ワタクシの聖騎士ボクレン!」

 よし、気合は十分貰った。さぁ――――――
 木刀を、ゆっくりと相手に向ける。

 全身の気が、収束していく。
 スゥ~息を吸い込む。

 「ふはは、おぬし気力が充実しておるな」
 「ああ、【加護】を2つ持ってるのは、あんただけじゃないぜ」


 俺はただ静かに、構えをとった。


 「さあ……じいさま。決着をつけようじゃねぇか」