おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「あの~~おっさん、朝練に戻っても……」

 そうだ、これはきっと何かの間違いだ。
 王様がおっさんに用があるわけない。絶対にない。回れ右!

 「ダメに決まってますよ!?」
 「いいわけありませんわ!」

 2人の聖女が声を揃えた。

 「諦めろ、ボクレン」

 静かに呟いたリンナが、俺の肩を掴んで元の位置に戻す。

 「そ、それ、本当に国王の手紙なのかな?」

 そ、そうだ。みんなが勘違いしている可能性がある。うん、そうだ、そうに違いない。

 「はい、間違いないでしょう。封が王家の紋章ですから」
 「そうですわね。これでイタズラでしたら、処刑ものですわ」

 マジかよぉおおおお……

 イタズラした奴出てきてくれよぉ~~
 誰か「ドッキリでしたー!」って出てきてくれ。
 そこらへんに隠れてるんだろぉ。言わないからぁ、怒らないからぁ。

 「もう諦めろ、ボクレン」

 ダメだ。全員があり得ないだろ何言てんだって顔してる。
 少なくともドッキリ明かし待ちの顔じゃない。

 うぅうう……本物かぁ。

 「なあなあなあセシリア、これなんの呼び出しなの、なあなあなあ」

 「ちょっ、ボクレンさん揺らさないで」

 「ひ、火あぶりかな。それとも海に沈められるのか? いや切り刻まれるのかも」

 「なんで処刑前提なんですか!」

 「いや、おっさん王様なんかに会ったことないから。としたら、もう罰しかないようぅ」

 「大丈夫ですよボクレンさん。まずは落ち着いてください」
 「たく、貴様はなにを怯えている……まさか! 裏で変態行為でもしているのか!」

 いや、変態行為はしてないぞ。

 「ええぇ! そうなんですかボクレンさん、私以外の胸みちゃってるんですかっ!!」
 「何ですのボクレン! ワタクシの胸では不満ですの!!」

 2人の聖女がその豊満なものを揺らしながら詰め寄って来る。
 これで不満などあろうはずがないだろっ! 

 ……じゃなくて……おっさんそんなゲスちゃうからね。

 「はいはい、ボクレンがおっぱい大好きなのはわかりましたから。まずは手紙の内容ですよ」

 そこへエリクラス隊長がぱんぱんと手を叩き、話を戻す。

 くっ……なんだか納得いかないが。いや好きか嫌いかと問われれば好きだけども。
 まあ、とにかく手紙の内容だな。おっさんの生き死にが関わっている。

 セシリアに視線を向けると、彼女がコクリと頷いた。

 「えっと、手紙の内容を要約すれば、国王陛下のまえで試合をしてくださいってことですね」

 「へ? だれが?」

 「もちろん、ボクレンさんがですよ」

 当たり前でしょ、といった顔で言い放つセシリア。

 「これ、ボクレンって人別にいるんじゃ、そうだボクレン違いだよ。おっさんなんかじゃない!」
 「ボクレンなんて名前、貴様しかいないだろうが! ちっ、なんでおっさんが御前試合に出られるんだ」

 なんでおっさんなんかが、王様の前で試合なんてするんだ。
 なんの需要もないじゃないか。

 「おそらく、さきの元聖女事件でボクレンの活躍が陛下のお耳に入ったんでしょうね」

 いやいや、みんな活躍しただろ。
 いらんことしとらんで、国政にいそしめよぉ……王様ぁ。

 なぜにおっさんが名指しなんだ。

 にしてもやはり、今回の件は流石におっさんには荷が重すぎる。

 「なあ、隊長。おっさん国王とか無理だよぉ。なんとか断ってくれないか」

 「あら、昨日はお楽しみだったんでしょ?」

 え?

 「私以外の若い子(聖騎士)たちを引き連れて、豪遊したんですってね」

 いや……ええぇ。

 「おばさんはいらないってことかしら」

 いやいや隊長もじゅうぶん若いやん。絶世の美女ですやん。

 「ああ~~私も行きたかったなぁ~あのお店~」

 ぐっ……ガチで拗ねてるじゃないか。大人げないぞ。

 「てことで、この件は断れません」

 まじかぁ……

 「いや、今日もう一回飲みにつれてくから、高級なところだぞ! な! な!」


 「貴様ぁ――――――陛下の依頼を断れるわけないだろうが!」

 ここでリンナのツッコミがはいる。

 「ふふ、リンナの言う通りです。ボクレン、断る選択肢はないですよ」

 やっぱな……いや、わかってはいたんだが。

 ふぅ……しゃーない。腹くくるか。


 「―――わかった。おっさん出ればいいんだな。そのゴゼンシアイとやらに」


 「ふふ、これでおじいさまも喜びます」

 おじいさま?

 「なんでエリクラス隊長のじいさんが喜ぶんだ?」

 「だって、ボクレン。あなたとの対戦を楽しみにしてましたから」

 対戦? 

 「ええぇ、もしかして俺の対戦相手ってエリクラス隊長のじいさんなのか?」

 どういうことだ、じいさまが対戦相手?
 これはもしかして、一般人のおっさんにもいい勝負ができるよう王様の計らいなのか。
 そうか、そういうことか。

 だいたい、わざわざ王様が見るのにおっさん瞬殺されてたら意味不明だからな。
 現役のすげぇ奴を出して、おっさん蹂躙してもなんも面白くないじゃないか。

 もちろんエリクラス隊長のじいさんなら、かつては多少なりともブイブイ言わせてたのかもしれん。
 だが、それは現役であればの話だ。

 そっか、そっか。王様はガチで試合を見る気はないんだ。
 学園聖騎士隊、よく頑張ったな! のお祝いセレモニー的なあれだよ。

 よかったなぁ~これでおっさんは死ななくて済みそうだ……!?

 あれ、なんかセシリアとアレシーナの顔が……

 「え、エリクラス隊長のお、おじいさまって……」
 「ええ、たしか元王国聖騎士ですわ……しかも……」

 え? なになに?

 へえ、元聖騎士なんだ。

 「ああ、2人の言う通りだ。元聖騎士団長ガスティーク様だ」

 ダンチョウ……?

 「やっぱり、剣聖さまですね」
 「まあ、伝説のお方ですわね。凄いですわ」

 ケンセイ?

 デンセツ?


 「えっと……ただのおじいちゃんだよね」


 「たしかにご高齢ですが、王国歴代聖騎士の中でも最強の呼び声も高い方ですよ」

 なるほど、最強っすか。

 王様ガチやん……大人げないぞ。