おっさん聖騎士の無自覚無双。ド田舎の森で木刀振り続けていたら、なぜか聖女学園の最強聖騎士に推薦された。~普通の魔物を倒しているだけなのに、聖女のたまごたちが懐いてくるんだが~

 「俺がアレシーナの聖騎士にだと?」

 「そうですわ」

 聖女アレシーナ。

 身の丈はすらりと高く、燃えるような赤の縦ロールは彼女の強気でプライドの高い性格そのままに、いつもピシッと完璧に整えられている。
 その瞳もまた髪に負けぬほど深紅で、見る者を射抜くような力強さを宿している。

 聖女っていうか聖火って感じがするな。

 「ワタクシのような聡明で優雅な聖女に選ばれるなんて、あなたはとっても幸運な方ですわ」

 一切の迷いなく言い放つアレシーナ。
 ええぇ……おっさんは一切希望してないんだが。

 おっさんの何を気に入ったんだだろうか。クレープ奢っただけだぞ。あ、あとは朝練の時にスカート捲った(事故)ぐらいか……
 選ばれる要素が全くないな。

 「というか、俺はすでにセシリアの聖騎士だぞ?」

 「問題ございませんわ。聖騎士が複数の聖女についてはいけない、という決まりはありませんの」

 そうなん?

 俺はチラッとセシリアに視線を向けた。
 そんな俺の天使が口を開いた。

 「アレシーナさん、確かに複数の聖女担当というのは聞いたことがあります。ですが、なにも無理やりボクレンさんを指名する必要はないと思います。あなたであれば、新たな聖騎士候補を迎え入れるのは容易でしょうし」

 「ふふ、セシリアさん。随分と素敵なお顔ができるようになりましたわね」

 たしかに、セシリアはアレシーナに苦手意識がある感じがしていた。
 彼女との魔法における実力差が、いやがおうにも劣等感を感じずにはいられなかったのだろう。

 またアレシーナも結果を求めるタイプなので、セシリアにもどかしさを感じていたのかもしれない。

 そんな2人の関係性も、野外演習を経て大きく変わった。

 セシリアが才能を開花させて、アレシーナが彼女を認めたからだ。
 いや……認めてはいたんだと思う。

 言葉がキツメなので誤解されがちだが、アレシーナはセシリアを最大のライバルと見ていた節があるからな。

 「なにも四六時中ボクレンを拘束する気はありませんの。必要な時に来てもらえば結構ですわ」

 学園の制服に包まれたその豊かな胸元をブルンと揺らすアレシーナ。セシリアといい勝負である。

 たしか歳はセシリアと同じはずだから、16歳ってことか。
 16歳ッてこんなに育つものなのだろうか。

 「どこ見てるんですか? ボクレンさん」

 セシリアにつねられた。
 いかん、意識がいつのまにか膨らみにいってた。

 「必要な時だけ? そんなんでいいのか?」

 気を取り直して、会話を続ける。

 「ええ、流石に後から来てかすめ取るなんて無作法はしませんわ。普段はセシリアさんについてくださいな」

 う~ん。良く分からんな。
 そこまでして、おっさんを推す意味があるのだろうか。

 まあ俺を評価していくれているのは嬉しいが。

 「ところで、アレシーナは目標とかあるのか? こういう聖女になりたいとか、何かを手に入れたいとか」

 「欲しいものは、権力ですわ!!」

 即答かい……

 「なんだ、いいお肉でも食べたいのか?」

 「そうですわ! なんだかんだでお金は必要ですわ、だから王都の高級焼肉にっ……て違いますわっ!」

 おお、ノリつっこみしてくれるやん。

 単にお堅い貴族聖女ではないな。

 「……ボクレンさん」

 セシリアからお叱りのお言葉がきた。

 「真面目なお話をしますわ……ここだけのお話です。いいですね」

 アレシーナの真剣な眼差しに、俺とセシリア、それにマルナとクリスティもコクリと頷く。


 「ワタクシの目標は教会の改革ですわ」


 え? なんか凄い言葉出てきた……

 「改革というのは?」

 セシリアが、言葉を挟む。

 「今の教会本部は派閥争いに、利権の取り合い、裏金での魔物討伐など腐敗がどんどん進行してますの」

 セシリアたち聖女も所属する教会。
 まあそんな巨大な組織だ。

 色々とあるんだろうな。

 アレシーナの言葉に、クリスティは深く頷き、セシリアとマルナはあまりよく理解していない顔だな。

 「そんな……裏金だなんて」

 「普通に横行してますのよ。もちろん教会ともなれば、様々な外交や立ち回りを要求されますわ。そこは致し方ないですが、最近の教会は度が過ぎておりますの」

 えらく詳しいんだな。

 まだ16歳だろうがさすが有力貴族の娘。全容を把握することはできないが、情報は多少なりとも入ってくるようだ。

 「つまりアレシーナはそんな教会を変えたいってことなんだな」

 「ええ、そうですわボクレン。もちろん容易い道ではないことは百も承知ですわ。ですが、動かなければなにも変わりませんわ」

 なるほど、多少語弊があるかもしれんが、それで権力か。

 「そのためには学園を首席で卒業して、さらに実績を積みますわ。それ相応の地位を得なければ、意見すら言えませんもの」

 この子はこの子なりの目標がある。自分の理想に努力を重ねているんだな。

 「そのためにも、ボクレン。あなたにワタクシの聖騎士となってほしいのですわ」

 そこまで必要としてくれるのか……
 俺はいいが……あとは―――

 セシリアに視線を送る。

 「はい、私は構いません。ボクレンさんが決めてください」

 そうか……なら―――

 「わかったアレシーナ。君の申し出を受けよう」

 「まあ! 良かったですわ♪」

 気品あふれる笑みをこぼした美少女。
 セシリアとはまた違った魅力だな。

 「アレシーナさん、これだけは覚えておいてください。私がボクレンさんの一番の聖女ですから」
 「ふふ、言うようになりましたわねセシリア。ワタクシの目標は果てしなく高いですわよ。半端な事をしていれば一番手の座から引きずり降ろしますから、覚悟なさい。
 ……あと、さんはもう不要ですわ」

 「うん、わかったよ。アレシーナ」

 にっこり微笑む合う2人の聖女。

 ということでおっさんは、聖女セシリアと聖女アレシーナの聖騎士となった。

 多少強引なところはあるが、根は素直でいい子だ。
 まあ、やる以上はしっかり守ってやる。


 そして、翌日―――


 「え? ここどこ?」

 俺はアレシーナに連れられて、王都の貴族街に来ていた。

 目の前にクソデカい屋敷がドーーーンと構えている。

 「ワタクシの実家ですわ!」

 「なぜゆえに実家??」

 「いまからお父様に会ってもらいますわ」

 「ええぇ……マジで? なんでおっさんが……」

 「だって、ボクレンを聖騎士にする許可を頂いてませんもの!」

 ませんもの! じゃねぇ!!
 そこ一番大事なところちゃうん? 無許可で進めてたたのかよ……そんな状況でおっさん行ったら、マズいんじゃないの?

 「もちろん一悶着はありますわ! でもボクレンなら大丈夫ですわ!」

 一悶着確定してるぅう!
 うわぁあ……揉めるのか? なあぁ揉めちゃうのぉお?

 「ふふっ、ボクレンなら木刀振っておわりですわ♪」

 んなわけないだろう……


 やっぱこの子、強引だわ。