あれから月日は流れ、暑い夏がやってきた。
もうすぐ夏休みになるからか、生徒が浮き足だっているように感じる。蝉の大群が一斉に鳴き始め、夏の訪れを感じさせた。
大河と宗次郎は最近になり、また登校する日にちが減ってしまった。それは新しく始まる舞台の稽古が始まったからかもしれない。
夏目には舞台のことはよくわからないけど、二人から感じるピリついた空気に何も聞けないでいた。
『新しい舞台で主役を射止めることができなかったほうが先生から身を引く』
宗次郎の言葉を思い出す度に頬が熱くなるのを感じる。
自分の為に大河と宗次郎は一生懸命頑張ってくれているのかもしれない……そう思えば「最近忙しそうだね?」なんて簡単に聞けるはずなどなかった。
今二人は一体何をしているのだろうか?
いつ結果がわかるのだろうか?
わからないだけに不安が募る。胸が苦しくてシャツの胸元をギュッと鷲掴みにした。
それは夕立がきそうな午後だった。さっきまであんなに晴れていた空が真っ黒な雲に覆われて、遠くからはゴロゴロという雷鳴が聞こえてくる。
「今日は早く帰ろう」
慌てて帰り支度を始めた夏目のスマホがメールの着信を知らせた。「なんだ?」とメールを確認すれば大河からだった。
『今すぐここに来てくれないかな? 宗次郎もいる』
短い文章と共に、地図が張り付けてある。
「あ、この劇場知ってる」
そこは街の片隅にある比較的小規模な劇場だった。観劇が好きな映画館のオーナーが作った劇場だと聞いたことがある。
しかし、そこはまだデビューしたての若手俳優が通るとされている登竜門。ここから大河と宗次郎も大舞台へと飛び立っていったのだ。
「でもなんでだろう?」
大河の考えていることがわからず首を傾げる。空を見上げれば今にも泣きだしそうな空模様。雨が降ってくる前にたどり着きたい……そう思った夏目は、慌ててリュックを背負い職員室を飛び出した。
「あった。ここだ」
電車を何度か乗り継いで辿り着いた劇場はもうだいぶ古くて、老朽化が進んでいた。大分前に長い劇場の歴史に幕を下ろしたと噂では聞いている。
「懐かしい……」
ポツリ呟く。昔はよくここに足を運んだものだった。今この劇場を訪れる人はいないのだろう。劇場内は怖いくらい静まり返っている。
ガチャリと重たい扉を押し開ければ、ギシギシッという無機質な音と共に扉が開いた。その瞬間眩しいライトが差し込み、思わず目を細める。
しばらく使われていなかった劇場は少しだけ黴臭くて……でもそれさえも懐かしく感じる。ゆっくりと歩を進めて舞台へと近づいた。
「あぁこの席だ……」
目を閉じればまるで昨日のことのように思い起こされる。
ここで初めて大河と宗次郎を見たのだ。
その当時まだ二人は中学生だったにも関わらず、どんな俳優よりも芝居が上手だった。
よく通る声にクルクルと変わる表情。羽が生えているのだろうか? というほど体は軽やかに動き、何よりもその整った風貌に視線だけでなく心までも奪われていった。
あの日から、大河と宗次郎は夏目の推しになったのだ。
「夏目」
舞台上の方からよく響く声が聞こえてきたから、弾かれるように顔を上げる。
「大河、宗次郎」
「夏目、来てくれてありがとう」
そう微笑む大河と宗次郎は、やっぱりキラキラと輝いている。それは初めて二人を見たあの日から全く変わっていない。
いつも夏目の心を熱く震わせるのだ。
「今日、新しい舞台の主役が発表されました」
「え?」
「新しい舞台の主役が発表されたんです」
「…………」
宗次郎の言葉に思わず言葉を失ってしまう。一体なんと言葉を返したらいいのだろうか……必死に色々考えてみるのだけど、気の利いた言葉が見つかるはずもなく夏目は唇を噛み締めて俯いた。
自分はどちらが主役になってほしいと思っているのだろうか? ずっと自分に問いかけてきた疑問。
どちらかを選ばなくてはならない……そう思っているのに、いつしか夏目は大河と宗次郎の両方に惹かれはじめていることに気付く。
それはどんどん強いものになっていき、言い訳なんてできないくらいになっていた。
小学生でもあるまいし「二人共好き」だなんて、いい年をしたおじさんが恥ずかしい……そう頭ではわかっているのに、心が言うことを聞いてくれないのだ。
「夏目、俺が主役に選ばれたよ」
「大河、が……?」
「そう。でも俺も選ばれました」
「宗次郎も? どういうこと?」
「俺と大河の二人で主役をつとめることになりました。いわゆるダブル主演です、夏目」
「ダブル主演……」
宗次郎の言葉がきちんと耳に入ってきてくれない。
心臓が少しずつ高鳴り始める。どんどん鼓動が速くなって息も苦しくて……。目の前が涙で歪んだから奥歯をグッと噛み締めた。
「主役に選ばれなかった方が夏目から身を引くって二人で決めていたけど、結局、俺と大河の二人が主役に抜擢されてしまいました。でもこれでは、勝負がつかない。だからと言って、俺は絶対に身を引くつもりなんてありません」
静まり返った劇場内に宗次郎の少しだけ震えた声が響く。
どうしてなんだろう……。あんなにスポットライトが降り注ぐ壇上にいるのに、大河と宗次郎は泣きそうな顔をしている。
不安そうに顔を歪める二人を今すぐにでも抱き締めてやりたかった。
「俺は、夏目が宗次郎を好きだとしても、この思いは絶対に変わらない。なぁ覚えてる? この劇場で俺達は初めて出会ったんだ。夏目はちょうどその辺の席にいて、キラキラと瞳を輝かせながら俺達を見つめてくれていた。その日から夏目は俺達を見守っていてくれたけど、俺も夏目を見つめてた……」
「大河……」
「告白をするならこの劇場だって決めてたんだ。ねぇ、夏目」
そういうと大河と宗次郎はその場に跪く。それは二人が花鳥風月としてお披露目されたときのシチュエーションにとても似ていた。
「夏目が好きです。俺と付き合ってくれ。宗次郎じゃなくて俺を選んで? なぁ夏目」
綺麗な瞳がユラユラ揺れて、その瞳に映し出されたスポットライトも揺れている。
――なんて綺麗なんだろう。
心の奥が熱く震える。大河と出会ってからもう何度もこんな感情を抱いてきた。
「俺だって夏目が好きです。いいや、愛してます。だからどうか俺を選んでください」
怖いくらい真剣な表情で自分を見つめる宗次郎に、夏目の心は締め付けられる。普段あんなに冷静な男に、こんなにも情熱的に迫られてしまえば、「NO」なんて言えるはずがない。
――宗次郎、俺だって君のことが……。
いつも遠くから見つめることしかできなかった推しに出会って、同居して……抱き締められてキスをして、こんな告白をされる日が来るなんて思いもしなかった。
予想外の出来事の連続に、今だってこれは夢なんじゃないかって疑ってしまう。まるで、童話に出てくるお姫様になったようで……夏目は夢心地だった。
「選べないよ、どっちが好きなんて……」
「夏目……」
大河の不安そうな声が静かな劇場に響き渡る。その声が少しだけ震えていて夏目の胸が痛んだ。
「俺は大河も宗次郎も好きだ。だからどちらかなんて選べない」
夏目の瞳から涙が溢れ出し頬を伝う。しかし、夏目には大河と宗次郎を天秤にかけることなんてできなかった。
「こんな中途半端な俺が二人の傍にいていいわけがない。だからこんな関係も今日で終わりにするね。これからは昔に戻って、一人のファンとしてモトヤガを応援していくから」
涙でグシャグシャになりながらも、夏目は懸命に笑顔を作る。
――ありがとう、大河と宗次郎。こんな俺を見つけてくれて。そして好きになってくれて……。
涙は止まることなどなく、次から次へと溢れ出した。
――でもこれで終わりだ。
二人の元から去ることは心を引き裂かれるくらい辛いことだけれど……夢のような時間を過ごせたことに感謝しよう。
夏目はそう自分に言い聞かせて涙を拭った。「今までありがとう」そう言おうと顔を上げた瞬間、大河と宗次郎が笑う。その笑顔は夏目が大好きな二人の笑顔だった。
「いいですよ、無理して選ばなくても」
「え?」
宗次郎の言葉に目を見開く。
「俺達、もう一度話し合ったんです。これからどうしていこうか、って。でも俺も大河も夏目を手放すことなんてできるはずがない。それで夏目を失うくらいなら、三人でずっと一緒にいませんか?」
「……三人、で……」
「そう、三人で。俺は宗次郎と夏目を共有するなんてまっぴらごめんだけど、夏目が思い詰めて俺達の前からいなくなっちまうくらいなら、このままでいい。ううん、このままがいい」
「あのさ、大河。俺だって夏目を君と共有するのなんて嫌だよ。でもこれが一番円満な解決方法なんだから仕方がないだろう? 我儘を言って夏目を困らせたら承知しないよ」
「わかってるって。いちいち説教すんなよな?」
「大河……宗次郎……」
まるで大きな子供二人が言い争っているかのような光景に胸が熱くなる。でも、本当にこれでいいのだろうか……そう躊躇ってしまう自分もいた。
でも夏目だって、大河と宗次郎のどちらかを選ぶことなんてできるはずがない。
「でも常識的に考えて三人で付き合うなんておかしいよ。そんなこと、俺にはできない。二人だって俺が馬鹿が付くほど真面目なことを知っているだろう?」
「ふふっ。知ってますよ。夏目は絶対そう言うと思ってました。でもね、そんな常識は俺達が変えてみせます。そんな常識が馬鹿らしくなるくらい幸せにしてあげるから」
宗次郎が目を細める。その笑顔は嘘偽りのないものだっだけれど、夏目の不安が消えることはない。
「本当に、二人はそれでいいの?」
「いいって言ってんじゃん。夏目は黙って俺達に愛されていればいいんだよ!」
大河は恥ずかしいのだろうか。不貞腐れたようにそっぽを向いてしまう。
大河と宗次郎の言葉に全身から力が抜けていく。ようやく止まった涙がまたポロポロと溢れ出した。
熱い涙は頬を伝い、ポタッと劇場の古びた絨毯の上に落ちて……音もなく消えていく。
心から溢れ出す思いを、もうしまっておくことなどできるはずがない。
この風船のように膨れ上がった感情は、いつの間にか『推し』から『愛』へとその姿を変えていた。
「俺は……俺は大河と宗次郎が好きだ」
「……夏目が好きなのは、俳優の大河と宗次郎ですか?」
宗次郎が一瞬表情を曇らせる。もう大河と宗次郎の悲しむ顔なんて見たくない。
夏目は大きく息を吸って二人を見上げる。
「違う。シュークリームじゃなくて梅干しが好きな大河が好き。それに、本当は甘えん坊でヤキモチ妬きのくせに無理して強がってる宗次郎も好き」
夏目の目からポロポロと涙が溢れた。拭っても拭っても涙は止まらず頬を流れ落ちる。
そんな夏目を見た大河と宗次郎がフワッと笑った。
「おいで、夏目」
舞台の上で両手を広げる大河と宗次郎に無我夢中で駆け寄って飛びついた。二人の逞しい腕にギュッと抱き締められてしまえば一瞬息ができなくなる。
苦しくて、でも幸せで……涙が次から次へと溢れ出した。
「俺達、夏目に告白するなら、絶対にここにしようって決めてたんだ」
「どうして?」
「だって、俺達が初めて出会った場所だから」
優しく大河と唇が重なれば、夏目の涙が口内に流れ込んできて塩辛い。そんな涙さえもコクンと飲み込んだ。
「これからは、客席からじゃなくて舞台の上から俺達を見ていてください。同じ目線でいてほしいから」
「うん……」
今度は宗次郎が優しいキスをくれる。
「大河……宗次郎……」
必死に二人にしがみついて「もっと」と自分からもキスをねだる。
そんな夏目を愛おしそうな表情で見つめたあと、大河と宗次郎が優しいキスをくれた。
「これから俺と宗次郎は夏目の推しじゃなくなるけど、変わらず愛してくださいね?」
「え? 推しじゃなくなる?」
宗次郎の言葉の意味がわからず首を傾げる。そんな夏目を見た大河がクスクスと笑った。
「ふふっ、そう。今日から俺と宗次郎は夏目の推しじゃなくて、彼氏だからさ」
「かれ、し……」
「そう、彼氏!」
ニッコリと微笑む大河と宗次郎から思わず体を離す。
――推しが彼氏に……推しが彼氏に……! しかも二人同時に!?
一瞬で血圧が上がり倒れそうになってしまう。まさかこんな日が来るなんて想像もしていなかったのだから。
この舞台の上で大きな歓声を浴びていた推し。今ではこことは比べ物にならないほど大きな劇場でキラキラと輝き続けている。そんな大スター達が自分の彼氏になるなんて……。
こっそり頬をギュッと摘まんでみたら体が跳ね上がるくらい痛い。
――これは夢じゃないんだ。俺は推しと、しかも二人と、恋人同士になれたんだ……。
いつの間にか『推し』という存在が『愛』に姿を変えていた。はじめはそれにひどく戸惑ったけど、目の前で微笑む大河と宗次郎を見れば心が幸せで満たされていった。
「ヤバイ、このまま死んじゃいそうだ……」
張り裂けそうな鼓動が痛くて、夏目はポツリと呟いた。
****
「はぁ疲れた……」
久し振りの出張に出かけた夏目は、歩き過ぎたせいで足が棒のようになってしまった。
日頃の運動不足を呪った。加えて今日はうだるような猛暑……地下鉄に乗った瞬間、その車内の涼しさにホッと胸を撫で下ろす。
「早く帰って夕飯の支度をしないと。今日は何にしようかなぁ」
電車に揺られながら思考を巡らせる。
きっと夜にはお腹を空かせた二匹の怪獣が、「夏目、お腹減った~!!」と喚きながら帰ってくることだろう。その光景を思い出すだけで、つい口角が上がってしまう。
とても幸せなのに、心が締め付けられるように痛い。
でも夏目はこの感情の正体を知っている。そうこれは……。
地下鉄から地上へ出ると、一気に熱風に包まれる。
「暑いー!」
無意識に顔を歪めながら、滝のように噴き出してくる汗を拭う。地下が涼しかっただけに夏の暑さが体に応えた。蝉の鳴き声が暑さを更に助長する。
「あ、見て! モトヤガだ!」
「本当だ! 新しいお芝居の記者会見だって!」
「やっぱり大河はかっこいいよね!」
「えぇ!? 私は断然宗次郎派だな」
映像が流れだした瞬間、信号待ちをしていた人達が一斉に黄色い声援をあげる。
駅前の一際大きなビルに設置されている街頭ビジョンを見上げながら、顔を紅潮させた女の子達がスマホを構えた。
「皆さんこんにちは」
聞き慣れた声に夏目も視線を上げれば、街頭ビジョンには記者会見を開く大河と宗次郎の姿が映し出されていた。
大勢の報道陣が集まった会見場所にはフラッシュが飛び交い、みんなが主役である大河と宗次郎に注目しているのがわかる。壇上でにこやかに手を振る二人は、いつもみたいにキラキラと輝いていた。
「八月から公演が始まる新舞台で、見事主役の座を射止めた八神さん、本宮さん、おめでとうございます」
「はい、ありがとうございます」
「今回は有名な脚本家が演出も手掛けたということで、大変注目を集めていますが、意気込みを聞かせてください」
「そうですね。今回のお芝居はどうしても見て欲しい人がいて……その人の為に頑張りました」
記者の質問に答える大河の表情はとても穏やかで……いつからこんな柔和な顔ができるようになったのだろう、と夏目は驚きを隠せなかった。
クールビューティーなどと呼ばれていたあの頃の面影はない。そんな大河の成長がとても嬉しかった。
「え? 見て欲しい人ですか?」
「はい。とっても大切な人なんです」
大河の言葉を聞いた瞬間会場が一気にざわめく。フラッシュが瞬き、シャッターを切る音が一際大きくなった。
「大切な人っていうのは恋愛的なものですか?」
「そうですね。恋愛的なものです」
自分が爆弾発言をしていることに、大河本人は気付いているのだろうか? 今日のネットニュースはこの話題で持ち切りだろう。
もしかしたらスポーツ紙の一面を飾るかもしれない。でも、そんなことはお構いなしに大河はニコニコしている。
「もしかして、今回共演した女優さんと熱愛報道がありましたが、その方のことですか?」
「いいえ、全然違います」
「では、こんな大スターのハートを射止めたのはどこの誰なんでしょうか?」
「今は言えません。でも僕が高校を卒業する頃に、もしかしたらお話することができるかもしれません。それに、ここに最大のライバルもいるので……」
「ラ、ライバルですか? それってもしかして……」
「はい、僕です」
大河の隣でずっと微笑んでいた宗次郎が照れくさそうに口を開く。その瞬間、会見場が揺れたのでないか? と心配してしまう程のどよめきに包まれた。
「え? ちょっとまってください。と言うことは、八神さんと本宮さんが同じ人を好きになったっていうことですか?」
「はい。うっかり同じ人を好きになっちゃいました」
「誰なんですか? その超がつくほどラッキーな方は」
「ふふっ。今は秘密です。先程大河も言ってましたが、高校を卒業する頃に、もしかしたらお話できるかもしれません」
「それまでは秘密、ということでしょうか?」
「はい。今は言えないです。すみません」
宗次郎が笑顔を浮かべつつもきっぱりと答える。その清々しい程の笑顔を見ると夏目の口角まで自然と上がってしまう。
大河と宗次郎の言う『大切な人』っていうのは自分のことなんだ、そう叫びたい衝動を必死に堪えた。
「今、俺と宗次郎には、大好きな人がいます。そして、その人の為に芝居をしたい。大好きな人の喜ぶ顔が見たいんです」
「今回のお芝居を絶対成功させるように頑張ります」
そう微笑む大河と宗次郎は王子様のように見える。あの笑顔が見たくて足繁く通った劇場。
例え自分の存在に気付いてもらえなくても、ただ遠くから彼を見ているだけで幸せだった。
同じ時代を生きているという事実だけで、満たされていたから。
でも今は違う。あのキラキラと輝く存在を独り占めしたいと思う。
誰にも渡したくなんかない。なぜなら大河と宗次郎は夏目の推しではなく、恋人なのだから。
「おーい、見てますか? 俺、頑張ります。大好きだよ」
「あ、おい宗次郎、抜け駆けすんなよな! 俺だって大好きだからな!」
カメラに向かいヒラヒラと手を振りながら無邪気に微笑む大河と宗次郎。それを見た夏目は思う。
――やっぱり俺の推しは最高だ。
【END】



