「同じクラスの人が事故に遭って、救急車が呼ばれるくらいの大怪我して、その現場に居合わせたにしては久世くんちょっと落ち着きすぎじゃない?」
「……ええと。なに、急に?」
「前から気になってたんだ。久世くん、ちょっと妙な感じするなぁって」

 思わぬ方向に向かい始めた話を、すぐには把握しきれない。
 妙な感じってなんだ。だいたい、清永がわざわざ僕に話しかけてきた理由ってなんだ。教室の他の誰でもなく、僕に確認したい理由がなにかあったのでは――ぞわりと背筋が(あわ)()つ。

 僕の困惑なんて承知の上とばかりに、清永は唐突に顔を近づけてくる。
 たまらず半歩下がった。けれど下がった分、また距離を詰められる。シャツの肩口に鼻を寄せられ、匂いを嗅がれていると思い至るまで数秒かかった。

 くん、と鼻を鳴らした清永は、微かに眉を寄せて僕を見上げてくる。

「ちょ、やめろ……おい!」
「久世くんさぁやっぱそういう匂いするんだよね、もしかして他人の未来とか()えたりする? ……いや違うな、これはもっと別の……ん~なんだろこれ」

 は、と声が漏れたきり、二の句が継げなくなる。