友達になった人気者が、人間じゃなかった話

 死期。魚。
 眼下の鯉を再び見下ろす。

 橋脚にわらわらと集うあの中に、そういうふうに――人間で言うところの首に該当する箇所が欠けて視えている奴がいるとでもいうのか。

 おかしい。そんなものが視えるはずはない。
 人以外の異変なんて、少なくとも僕は一度も視たことがなかった。

「ど……ういう意味、それ?」
「面白いね、魚は首じゃなくて尾がなくなるんだなぁ。あぁ面白いなんて言っちゃ駄目だな、不謹慎だ」
「あ……」
「死ぬって分かっても、助けてあげられるわけでもなんでもないもんな」

 ぞっとする。
 眉尻を下げて困ったような微笑みを浮かべる清永の目は、あの三日月みたいな形に細められている。その顔が、僕にはどうしても人間ではないなにかに見えてしまいそうになる。

 首じゃなくて尾がなくなる。助けてあげられるわけでもなんでもない。
 僕が知っていることも、知り得なかったことも、清永は知っている。知りすぎている。思えば最初からそうだった。

 清永は普通ではない。
 ヒントもなにもなしに僕の力を見抜いて、『貸して』と切り出して、その言葉通りに借りて、僕からは力が消えて、そして清永に移った力は今、僕の知らない独自の変化を遂げていて――そんな芸当は、普通の人間には絶対にできない。