友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「葉月って名前、風流でいいよな。月の和名でしょ? 睦月、如月、弥生ってやつ」
「風流……そうかな」
「そうだよ。これから下の名前で呼ぼっかな~、久世くんのこと」
「ええ、恥ずい……なに急に」
「いいじゃん、下の名前で呼ぶのって特別な友達って感じしない?」

 屈託なく笑う清永は今日も眩しい。
 清永のこういうところがいいな、と思う――でも。

「葉月!」

 照れくさそうな声で名を呼ばれた途端、ぐに、と清永の首が伸びて歪んだ。

 あ、と咄嗟に零れかけた声を、僕は唇を噛み締めることでなんとか堪える。
 まばゆいばかりの笑みを浮かべているのに、輪郭が人のそれではない。そのアンバランスさが一層不気味さを煽る。制服の中身が、前に渡り廊下で話したときみたいに、ぐにゃりと曲がって歪んで見える。

 ……見るのはもう五回目だ。
 たぶん、今日はいつもより首が長く伸びている。

 見慣れてきてしまったのが良いことなのか悪いことなのか、僕には判断がつかない。
 ただ、こうなったときにやることは決まっている。

 瞼を閉じるのだ。
 そして閉じた後、できるだけ早く開かなければならない。
 清永からただの瞬きだと思ってもらえるように。