友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「映画はたまに観るし、本読むのも全然嫌いじゃないんだけど、そもそも物語で泣いたりとかできないんだよな~俺」
「ふうん」
「でも泣いてみたいな。久世くんが泣いたんなら泣きたいわ、俺も」
「なにそれ、どういう目標?」

 謎の意気込みにツッコミを入れつつ、またひとつ清永について知れたな、と密かに思う。
 清永は自分自身のことをなかなか話そうとしないから、こういう些細なやり取りでも逐一心に留めてしまう。

 それから清永は改めてページをめくり始め、その間、僕はぼうっと空を見ていた。
 気まずくない沈黙も存在するのだと知ったのは、こうして清永と一緒に過ごし始めてからだ。

 武田たちとの一件以来、清永とは、周りに人がいてもいなくてもよく話すようになった。
 クラスの人たちとも、前よりきちんと顔を見て喋れていると思う。ふとした折に俯いてしまう癖はまだきちんと直ってはいないけれど、おとといより昨日、昨日より今日と、確実に前を向けている気がする。

 孤立を恐れて武田たちと一緒にいる選択をしていた頃よりも、ずっと息がしやすい。
 それは僕が普通になったからだろうか。気色悪い力がなくなって、それをきっかけに前を向けるようになったから、なんだろうか。

 たぶん違う。