友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「好きにしたら? まぁ雰囲気ちょっと違うし、最初からちゃんと読むほうがおすすめだけど」
「ああ~それは確かにそうすぎる、でも我慢できない読む!」
「ふふ……好きにしたら?」

 同じ言葉を繰り返しながら、いつも以上にテンションが高いな、と笑ってしまう。
 本をパラパラとめくる清永の指は、おそらく彼が映画で観たという特定のシーンを探すために動いている。案の定、すぐに浮かれた声が聞こえてきた。

「ここだ~! この台詞めっちゃ覚えてる!!」

 テンションがさらにうなぎ登りで、ますます面白い。
 横から覗き込む。映像化の際に注目されて宣伝でもよく見かけていた、有名な台詞の出てくるシーンだった。

「いいよな、そこ。僕そこ初めて読んだとき普通に泣いたわ」
「えっそうなん? 俺は映画では泣かなかったですけど」
「は? なんでだよ泣けよ」
「いや泣けよってなに、そんなん初めて言われたウケる」

 軽口を叩き合いながら、とうとうふたり揃って噴き出した。
 清永はあまり本を買わないらしい。昨日そう話していた。かといって、読書が苦手というわけではないみたいだ。現に、例のシーンにひとしきり感激してみせた後、彼は一旦本を閉じて丁寧に表紙カバーを撫でている。