友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「あ、昨日言ってたやつ?」
「うん。別に教室で渡しても良かったんだけど」
「ありがと~、俺これ映画でしか観たことなかったんだよな!」

 浮かれた声をあげて文庫本を受け取る清永からは、遠慮している感じも気を遣っている感じもしない。本当に楽しみにしてくれていたのかな、と思う。

 今年の春に公開された映画の原作小説だ。(とし)も家庭環境もなにもかもが違う、偶然コンビニで出会った女の子同士の友情の物語。
 昨日の帰り道に話題に上がった。小説は読んだことがないと聞いて、僕は持っていたから、『明日持ってく』と約束していた。

「なぁ久世くんってこういうの、途中だけペラッとつまみ食いっぽく読む奴にムカついたりとかする?」
「え、別にムカつきはしないけど……ていうかあんた映画観たんだろ、話の流れはだいたい同じだぞ」
「いや俺さ~、ピンポイントで読みたいトコあんの今すぐ!」

 小さな子供みたいに熱弁するから、だんだん面白くなってくる。
 この時間が好きだ。北校舎四階の階段を塞ぐ安っぽいチェーンを越えた瞬間から、清永は校内で常に被っている〝皆の人気者〟の仮面を外す。