「あ……いや、別に」
返事とともに、困惑が顔に出てしまう。
当の清永は、あからさまに顔を引きつらせた僕が見えていないのか、あるいはそもそも気にしていないのか、一方的に自分の事情を喋り始める。
「今朝さぁ、電車が遅れてちょっと遅刻しちゃったんだけど、教室めっちゃざわざわしてるし久世くんだけフラッとどっか行こうとするしで……気になって追いかけてきちゃった」
「ああ、うん、はい」
「ねえ、なんかあったの今日?」
首を傾げて尋ねてくる清永は、本当に今朝の事故のことをなにも知らず、教室がざわついている理由を純粋に知りたがっているように見えた。
どうしてわざわざ追ってきてまで僕に訊くんだ、教室にいる連中に訊いたほうが早かっただろ、と少し面倒に思いつつ、僕は仕方なく返事を口にする。
「……事故」
「え?」
「朝、渋谷さんがバイクに轢かれて、救急車で運ばれたんだよ」
「ええっ、渋谷さんってうちのクラスの渋谷さん?」
驚きに目を瞠った清永から、僕はすっと視線を外す。
本当に、なんで僕に訊くんだろう。話し慣れない相手だからかなり気まずい。
清永の制服のネクタイに焦点を定め、僕は別に無視しているわけではないという体をなんとか保つ。
返事とともに、困惑が顔に出てしまう。
当の清永は、あからさまに顔を引きつらせた僕が見えていないのか、あるいはそもそも気にしていないのか、一方的に自分の事情を喋り始める。
「今朝さぁ、電車が遅れてちょっと遅刻しちゃったんだけど、教室めっちゃざわざわしてるし久世くんだけフラッとどっか行こうとするしで……気になって追いかけてきちゃった」
「ああ、うん、はい」
「ねえ、なんかあったの今日?」
首を傾げて尋ねてくる清永は、本当に今朝の事故のことをなにも知らず、教室がざわついている理由を純粋に知りたがっているように見えた。
どうしてわざわざ追ってきてまで僕に訊くんだ、教室にいる連中に訊いたほうが早かっただろ、と少し面倒に思いつつ、僕は仕方なく返事を口にする。
「……事故」
「え?」
「朝、渋谷さんがバイクに轢かれて、救急車で運ばれたんだよ」
「ええっ、渋谷さんってうちのクラスの渋谷さん?」
驚きに目を瞠った清永から、僕はすっと視線を外す。
本当に、なんで僕に訊くんだろう。話し慣れない相手だからかなり気まずい。
清永の制服のネクタイに焦点を定め、僕は別に無視しているわけではないという体をなんとか保つ。



