友達になった人気者が、人間じゃなかった話

「久世くん」

 背後から声をかけられ、はっと目を見開いた。
 清永の声だった。今ちょうど話したいと考えていた相手から声をかけられ、僕は弾かれたように振り返る。

「どしたの、びっくりした顔して」
「いや……今、あんたのこと考えてたから」
「えっなにそれ、かなりアツい」

 驚きのまま、つい気色の悪い発言をしてしまった。それでも清永は平然と笑っていて、張り詰めていた気持ちがふっと緩む。
 歩み寄ってきた清永は、さも当然とばかりに僕の隣に並んだ。

「見てたよ。武田くんたちと話してた、っていうか喧嘩してたとこ」

 ……見てたのかよ、と苦い気分になる。
 どの辺のやり取りを見てたんだろう、と恥ずかしくなる。渋谷さんの悪口を止めた辺りだろうか。それとも、清永について喋った辺りまで聞いていたのか。

「どこで見てたの。さっき教室いなかっただろ、あんた」
「いや廊下からそっとさぁ。今教室入ったらまずいかなって俺なりに気を遣って……話に俺の名前も出てきてたし、だいぶ気まずいでしょ」

 唇を尖らせる清永へ、昨日だってそんな感じだったろ、と言い返そうとした矢先、高らかに予鈴が鳴り始めた。
 教室に戻るなら早くしないと、と迷った僕の、その迷いがまるごと見えているかのように、清永は「あは」と笑い声を零した。